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金利が上昇すると株価が下がると言われるが、正確には「株価が不安定になる」が正しい。金利上昇による悪影響を凌駕するような好業績が出ていれば、徐々に高値を更新するのが株式市場の傾向だ。
株価の不安定化には、金利上昇が関係する。
金利上昇時の株価の反応について、次の3つを第26回〜第28回にかけてシリーズで解説していく。
1.企業経営の利益を減少させる
2.不確実性を上昇させる
3.将来利益の評価額を目減りさせる
今回は、1.の「企業経営の利益を減少させる」を解説する。
この背景は簡明で、多くの企業は借入金を利用しながらビジネスを行っているが、借入金の利払い費用が増えることで利益を圧迫するためだ。
ただ、金利が上がっても、現在のローンの利払いコストが増えるわけではない。
ではなぜ投資家は将来の借り換え時に利益が減少(=利払いコストが増加)することを懸念するのか。
それは、例えば「株価 = 将来予想利益×PER」から見ると、将来予想利益が減ることで株価を下押しするプレッシャーが加わるからだ。
また、金利上昇時には銀行が貸出審査を厳しくする傾向がある。
金利上昇が引き起こす企業の利益の減少が「貸し倒れを増やす」と懸念して、慎重な貸出姿勢になるためだ。例えば、これまで5年間の長期で借りられていた銀行融資が、3年間に短縮されたり、10億のローンが8億円に減額されたりする場合がある。もし減額されたら、銀行よりも高利率のノンバンクなどからお金を借りることも考えなくてはならない。
このような様々なことを投資家やアナリストは懸念するのだ。
金利上昇で利払いコストが上昇した際に企業は、(A)商品やサービスの値上げをする場合と、(B)コスト削減努力をする場合がある。
(A)商品やサービスの値上げの場合は、金利上昇によって生じたコスト増加分を賄うことをする。ただし、消費者は値上げにより購入を避けるかもしれないし、商品やサービスを購入してビジネスをしている取引先企業は、仕入れ値が上がることになるので、仕入れの量やそもそも仕入れすること自体を考え直すかもしれない。
(B)コスト削減努力の場合は、中間資材やサービスを納入してビジネスをしている企業、いわゆる下請け企業に対して、値下げ要請をすることが常道である。値下げ要請をされた下請け企業は薄利で商いを行うこととなるため、利益は減少する。
(A)や(B)は間接的な悪材料であり、株式市場はこれらの間接的な懸念を株価の下押しプレッシャーと受け止めるのだ。
今回のまとめ
投資家は金利が上がると、将来の借り換え時に利益減少(=利払いコストが増加)することを懸念する。 株価 は 「将来予想利益×PER」などで予想ができ、将来予想利益が減ることで株価を下押しするプレッシャーが加わる。
金利上昇に対応する値上げやコスト削減努力によって、取引先企業のコストアップや利益減少も起こる。
第27回「金利上昇時の株価の反応(2)」は、6月21日(金)に掲載予定です。
金利が上昇すると株価が不安定になる要因の2番目は・・・
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