ウィークリーレポート・マンスリーレポート
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信用の所有権移転の方法は太古の昔から現代まで変わっていない。
1.信用が記録された媒体が小さくて持ち運び可能なものなら、その媒体(貝殻、珍しい石、金貨、銀貨、銅貨、硬貨、紙幣等)を相手に 手渡す。
2.大きく重たく持ち運びに適さない形式の媒体の場合は、所有権を表す印を媒体に表示する。
有名なヤップ島の巨石の場合は石の表面に第三者に見えるように印をつける。
現代の金塊の所有権の公示は、ヤップ島と類似の方法で行われる。
ニューヨーク連邦銀行(NY連銀)地下倉庫に保管されている各国政府が保有する金塊の所有権が移転した場合の公示方法は、
金庫内に金塊を保管したまま、その表面に刻まれた所有国名を示す刻印を打ち直す(例:JPNからUSAに)だけだ。
自分の意思に反していたとしても、刻印の打ち直しが行われると所有権が移転したかのように公示されてしまう。
刻印の打ち直しとは重要な行為なのだ。
ヤップ島はかつてドイツ軍に占領されたことがあった。
ドイツ軍は飛行場建設に島民を駆り出そうとしたが、彼らは「我々はこの多くの巨石に示されたように裕福だから、
建設労働でお金を稼ぐ必要がない」と拒否した。
そこでドイツ軍の将校の一人が、巨石のすべてに×印を付けて、「これらの巨石はドイツ軍のものだ」と宣言した。
すると島民は富を失ったと思って 建設労働に従事した。
飛行場完成後に将校が×印を消すと、島民は再び裕福になったと認識して建設労働に参加しなくなった。
富を所有しているという意識は、実に不思議なものである。
現在でも手形や小切手に所有権移転を示す裏書が行われ、裏書済みの手形や小切手を被裏書人から善意で重過失 のない
第三者が受け取ると、その第三者は正当な所有者になれる。
当然のことだが、現在流通している現金(紙幣、硬貨)の場合は盗難された現金であっても、
正当な商行為などの対価として受け取った善意で過失 のない第三者は盗難された所有者に原則返却する義務はない。
さて欧州では、ルネサンス前後から国境を越えた金貨や銀貨の使用が盛んになっていった。
それは次回の話
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