ウィークリーレポート・マンスリーレポート
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戦争するには、巨額の資金が必要だ。
しかし、増税は無理だから増税以外の手段で資金調達するしかない。
その時に中世ヨーロッパの王様は下図のようなふたつの手段を行使した。
王様はやりたい放題だった。
何故なら、王様は一番偉く、彼には誰も逆らえない絶対的な存在であり、誰も彼を罰することはできなかったのだ。
中世の豪商や金融財閥で王様に巨額の融資をしたあげくに踏み倒され、その後に没落した例は多い。
スペインのハプスブルグ家カール1世への巨額の貸し付けが踏み倒されて没落したフッガー家は有名だ。
金の含有量を減らした新金貨の発行は古今東西、王様や皇帝の常とう手段だった。
無努力かつ王様の独断でできる通貨の改悪を防ぐ手段は存在しなかった。
当然の事だが、国民は金の含有量の多い旧金貨を新金貨と交換しようとせず、万が一の時の保険として貯蔵した。
しかし、近代になり近代化や軍備に必要な予算が、中世の5倍、10倍と膨れ上がると、踏み倒しや通貨の改悪という小手先では資金の工面が不可能になった。
それと同時に、過去の王様の悪行に懲りて、悪い王様には誰もお金を貸さなくなった。
嫌々ながらも、王様はやりたい放題を宗旨替えするしかなくなったのだ。
近代の王様が借金をするには、中世とは比べ物にならないほどに貸主の信頼を得る必要性が高まった。
借金をするには、金本位制を採用して貸主の信用を得るしかなかった。
当時の金融制度における頂点は金貨であり、金貨で借金が返済されることが資金提供者の望みだったからだ。
金本位制とは、王様や国家が信用を得るためのものだった。
「金の保有量」を無視して通貨を発行することは許されなくなった。
しかし、王様としては不機嫌極まりない事態だった。これまでは世の中の最高権力者である王様に盾突くものはいなかったからだ。
それが今や国家財政の破綻だけに留まらず王様自身の破滅につながることを認識したからだ。
その典型例が放漫財政と借金の踏み倒しを続けたフランスで、ルイ16世がフランス革命でギロチンの餌食になった。
中世が近代になった時に、社会構造が大きく変わってしまい、王様は社会構造の変化について行けずに弱体化する羽目になったのだが、、、
それは次回の話
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