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人類の経済活動の歴史を振り返ると、信用(ツケ)の利用が最初に発生し、お金はかなり後になって発明された。(参考:春山昇華の豊健活教室 第2回 非等価交換を可能にしたツケの発明https://www.smtam.jp/report_column/detail/cat_11/00929/)信用を可視化させ、それを保持する手段としての金銀銅などの金属(その後に“お金”に発展する)が利用可能になるのは、信用(ツケ)の利用から何千年も後のことだ。そんな不便な状態でも人類は経済活動を活発に営み続けた。
紀元前700年頃に金貨の流通が始まり、そこを起点に約2500年後の西暦1800年頃に近代的な通貨制度に到達した。現代では、紙幣、手形、小切手、譲渡性預金(CD)、コマーシャルペーパー(CP)、クレジット・カードなど様々な支払決済ツールが使われている。
中でも21世紀になってメキメキと増加しているのが、デジタル化されたお金だ。一つは、企業や家計が保有する現預金をSuicaに代表されるようなモノに移し替えて使うタイプで、プラスチック・カード形式とスマホ形式がある。例えばSuicaだがJR東日本の規約には「ICチップを内蔵するカード等に記録された金銭的価値等」と記載されているが、下図のような仕組みになっている。
もう一つは、流通業者が販売促進を目的として付与するポイントで、これは企業が保有する現預金(ツケ的な発行も含まれる、企業会計上は“負債計上される”)を特定エリアで現金的に使えるような形で顧客にポイントとして付与している。アマゾン・ポイントの場合はアマゾンという世界的なコミュニティの中ではお金と同等の使用価値を持っている。
下図のnanacoの例を見れば、1ポイント=1円で電子マネーに交換できるので、ユーザーから見た経済的な使用価値という点では現金チャージされた「電子マネー」と付与された「ポイント」の境界線は消えつつある。
電子マネーやポイントを経済的な観点で考察すれば、ユーザーが商品やサービスと交換できるモノ(電子マネー、ポイント)なら、紙幣や貨幣でなくても問題がないという事になる。換言すれば、デジタル化された金銭的な価値とは、「商品やサービスと交換可能な信用」であり、人類が最初に発明したツケと同じである。人類の使うお金は目に見えない形式になったわけで、お金は歴史の振り出しに戻ったとも言える。
デジタル化されたお金には利点がある。まずは偽札問題が存在しない。さらには、マネロン問題が解決できる。何故なら、デジタル通貨を記番号(お札に印刷された番号)を管理することで、その流通を追跡管理することが可能だからだ。正直に生きる人には困ったことはないだろうが、ズルをする人にとっては住みにくい時代になるだろう。
私たち人類はお金に関する歴史で何を信用してきたのだろうか、、、、
それは次回の話
※当資料は春山昇華氏の個人の見解であり、三井住友トラスト・アセットマネジメントの見解を示すものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
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