ウィークリーレポート・マンスリーレポート
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給料を銀行振り込みで受け取ると、通帳の「円の残高」が増える。商品やサービスを販売し、取引先から代金が振り込まれると、やはり通帳の「円の残高」が増える。私たちは、労働や商品サービスの販売の対価に円を受け取ることを当然と考えており、特に疑問も挟まず他の選択肢も考えないだろう。
想像してみて下さい、、、、毎月の給料をお金ではなく、勤務先が製造している洗濯機や冷蔵庫でもらうような現物支給の世界、そして取引先が対価として小麦や米を送ってくる世界を。洗濯機、冷蔵庫、小麦、米を受け取ったら、その他の食糧や生活必需品をどうやって手に入れるのか?洗濯機、冷蔵庫、小麦、米を食料や生活必需品と交換してくれる人を家族総出で探し回ることになる。これはまさに物々交換時代に生きた人類の苦労だ。
貨幣経済が発展した時代になっても、給料を現物で受け取る制度は武士の世界では江戸時代まで続いていた。給料を米で受け取った江戸時代の武士は生活必需品などを購入するために、米を売却し貨幣を得ていた。
主食である米は他の商品に交換するのが容易で、しかも長期間の保存も可能だったので交換に応じてくれる商人は多かった。しかし、米の価格は作柄に影響されて乱高下しやすく不安定だった。さらに、江戸時代は長期間平和が続いた時代だったので、農業の生産性が徐々に向上し米の生産量増加と米価格の下落(=米以外のモノの価格が上昇)が発生した。定量の米を受け取る「サラリーマン武士」は米を売って得られる貨幣額の減少(=購買力の低下)に悩まされた。
給料・販売代金として何を受け取るのか?円以外の選択肢が社会的に許され、複数の選択肢を与えられるのなら、いったい何に重視し決めたら良いのだろうか?
第一に、受け取ったモノが将来何か別のモノと“簡単に交換できる”ことが、最も重要だ。なぜなら家族総出で物々交換してくれる人を探し回る苦労をしなくてすむからだ。交換が簡単だという当たり前の状態を“貨幣の発明によって達成”した人類の創意工夫は画期的なことなのだ。
第二に、“その交換性が長期的に維持される”ことが、重要だ。はやりすたりで数か月後は見向きもされないモノでは、それを持って行っても何も買えなくなる。
第三に、“交換時の価値(交換レート)が安定している”ことも、必要だ。交換レートの上下動は売り手と買い手に不必要な損得を発生するので、交換レートの安定性が必要なのだ。
ビジネス取引の場合、「交換しやすいモノ、交換性が長期間維持されるモノ、交換レートが安定しているモノ」を相手に渡すのが合理的な結論なのだ。
労働の対価、販売の対価、それを受け取る時に、上記の3点を考慮すれば日本国内では日本円がベストだ。しかし、日本円以外でも受け取り候補となるものは考えられる。即座に日本円に交換できるモノとして米ドルでも良いかもしれない。商品やサービスと簡単に交換できるモノなら、貨幣でなくても問題がないと思う人は多いだろう。例えばスイカ・ポイント、アマゾン・ポイントなど各種ポイントは、それが使える範囲(=コミュニティ)内ではお金と同等の価値を持っており、貨幣と等しく使用されている。
さて、世界には多くの国、沢山の通貨がある。それぞれの通貨は対等なのだろうか?、、、、
それは次回の話
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