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株価を分解した式(株価= EPS×PER)に関して
1:世界中の投資家に共通の真実は株価
2:EPSは予想EPS(予想業績)だから様々な予想数値が存在している
3:PERは両者の割り算の答えに過ぎない
と第9回ファンダメンタルズとチャート(https://www.smtam.jp/report_column/detail/cat_11/01740/)で説明しました。
今日は予想EPSの話を少し詳しく説明します。予想EPSとはメダカの群れに似たような動きをする側面があります。メダカの群れはちょっとしたことで泳ぐ向きを変えます。しかも、全員が一斉に向きを変えます。そして、予想EPSもメダカの群れと同様に、ちょっとしたことに一喜一憂するのです。投資家は、真実の値としての株価を認識し、株価と予想EPSで割り算した値であるPERとの関係に納得します。しかし、納得の直後から様々なニュースが投資家めがけて飛び込んできます。政治ニュース、マクロ経済ニュース、個別企業のニュースなどが引っ切り無しに降り注ぎます。その結果、新しいニュースを考慮すれば、予想EPSはもっと良く(または、悪く)なるのではないか、と投資家は嬉しく(または悲しく)なります。この心の変動は、多くの投資家の心の中で同時期に同一方向に起こります。投資家の心はメダカの群れとソックリの動きなのです。少し格調高い表現に換言すれば、連続的に入ってくる情報によって、予想EPSがどの程度実現するか(=確信度)が変動する、ということです。コンセンサスの数値が心理ファクター(欲と恐怖の間を振り子のように揺れ動きます)によって変動するのです。
元来投資家は慎重です。言われたことを額面通りには受け止めません。やや割り引いて考える(確信度が100%以下で推移することが多い)のが平均的な投資家です。額面以上になるのは滅多にありませんが、株価の順調な上昇が長期間続いた時やバブルの時はそうなります。
平時の確信度の変化を単純化すれば下図のようになります。日々発生する様々な要因(その多くはニュース、観測記事)によって確信度が、90%,95%,85%,95%,100%,90%と変化すると、予想EPSである150という数値が、投資家の心の中では135,143,128,143,150,135と変動します。その結果、PER:15倍を乗じた株価は、2025円,2138円,1913円,2138円,2250円,2025円と変動するのです。
ここまでをまとめると
1:予想EPSに変化が無くても、投資家はそれが実現する確信度を変化させている
2:投資家の心の中では「実現するだろう予想EPS」は変化している
3:2によって株価の変動が起こる
…となります。これを別の切り口から表現すれば
4:公表されているコンセンサス予想EPS(メディアが集計している予想EPS)は同じなのに、株価は変動している
5:株価は公表されているコンセンサス予想EPSで割り算し産出されるPERが変動していると見える。だから、株価を変動させているのは、PERが変動するからだと解釈できる
…となります。
図2は、上記「1,2,3」を説明した図で、図3が「4,5」を説明した図です。図2は、株価=EPS×PERという株価を分解した式のEPSの変化に注目して株価変動を考えており、図3はPERの変化に注目して考えているという違いであり、どちらも間違いではありません。
春山は「公表されているコンセンサス予想EPSと投資家の心の中の予想EPS(この瞬間に市場が織り込んでいる)は別だ」と考えています。公表されているコンセンサス予想EPSとは、証券会社のアナリストが文書で提出したものを集計企業が取りまとめて公表しているので、どうしても時間的に遅くなります。アナリストは予想EPSの修正の必要性を感じても、それを証券会社内の正式な文書で作成するには時間がかかりますし、それを集計企業に提出するにはさらに社内の手続きなど時間がかかります。それを受け取った集計企業がコンセンサス予想EPSを修正してその企業のHPなどに掲載するにはさらに時間がかかります。投資家はそういう時間差を知っているので、様々なニュースを知った瞬間に「コンセンサス予想EPSは上に(または下に)変化するだろう」と思って先回りして心の中の予想EPSを変化させて売買判断するのです。
さて、証券会社のアナリストが出しているコンセンサス予想EPSを集計して発表している企業は数社ありますが、コンセンサス予想EPSってどうやって計算しているのでしょうか?例えば、集計しているアナリストの人数はQUICK社:11人、IFIS社:18人、Bloomberg社:22人と表示されているとすると、予想EPSの計算は、各社に予想を提供しているアナリストの予想数値の単純平均です。春山は時間差を伴って遅れ気味に発表されるコンセンサス予想EPSは市場が織り込んでいる(投資家が先回りして変化させている)“投資家の心の中の予想EPS”の後追いになっていると判断しています。
さて、株式投資を始めるには資格も免許も不要です。お金さえあればワンクリックで株の売買ができます。しかし、「できる」と「儲かる」は別の話です…
それは次回の話
次回は、8月4日の掲載予定です。
※当資料は春山昇華氏の個人の見解であり、三井住友トラスト・アセットマネジメントの見解を示すものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
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