三井住友トラスト・アセットマネジメント
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三井住友トラスト・グループ

Ⅱ.ESGマテリアリティ

1.ESGマテリアリティとは

ESGマテリアリティとは、投資先の価値向上や持続的成長を推進する上で、当社が重要であると考えるESG課題を指します。当社が行う投資先のESG評価および、エンゲージメント活動や議決権行使判断などを含むESG投資を行うに当たっては、ESGマテリアリティを考慮します。また、ESGマテリアリティを当社が各種のスチュワードシップ活動を計画、推進する際の基軸に位置づけ、エンゲージメント活動、イニシアチブを通じた各種活動や議決権行使活動の実施計画策定における基盤とします。 ESGには、それぞれの観点において、多くの課題やテーマが存在し、外部の各評価主体により異なるため、当社としての「ESGマテリアリティ」を定義し、ESG投資における主な評価項目と評価内容を以下3.から5.に定義します。

2.ESGマテリアリティのレビュー

ESGマテリアリティは、各ステークホルダーとの対話等を通じて得た情報なども勘案し、年次でのレビューを行います。

3.環境

概要
あらゆる経済活動は自然環境に依存して営まれていますが、産業革命以降の人類の活動は、自然環境に大きな負担を強いており、人類の持続的な繁栄そのものを脅かす課題となっています。持続可能な社会を実現し顧客資産の中長期の投資収益を確保する上では、投資活動において自然環境の要素を考慮し、循環型社会の実現を後押しする取り組みが必要です。

① 気候変動
二酸化炭素に代表される温室効果ガスの蓄積に起因する地球の温暖化と、それに伴う異常気象の発生は、将来の脅威ではなく、目の前の現実となっています。当社では、気候変動問題を、社会全体および経済活動に影響を及ぼす最重要の課題として、国際的な枠組みなども踏まえながら、その緩和および適応策をESG投資に反映します。

② 自然資本
経済活動は自然資本に高く依存しています。主要な原材料である自然資本の不適切な利用は、持続的な資源利用を不可能とし、社会の持続的な繁栄を脅かすものとなるため、持続的社会の維持のためには自然資本の減少を食い止め、回復させることが必要です。当社は中でも、社会や経済を支える生態系サービスの基盤である生物多様性や気候変動対応としてのカーボンシンク(炭素吸収源)の役割を担う森林保全の重要性、またそうした課題はサプライチェーン全体でも発生しうることを認識しています。当社では、生物多様性や、森林、水、鉱物、農林水産等の自然資本・資源の持続可能な利用の状況をESG投資に反映します。

③ 汚染・廃棄物
経済活動の副産物として発生する各種廃棄物が、国や企業等により適切に管理されない場合、環境破壊や汚染による自然資本の棄損につながるとともに、希少な資源の浪費をもたらします。当社では、国や企業等の法令や規範等への遵守などの状況や、製品等のライフサイクルを通じた廃棄物削減や資源循環による自然資本・資源の持続可能性をESG投資に反映します。

④ 環境関連機会
上記①~③の環境関連課題は、国際的な取り組みの推進、政府レベルでの政策変更や消費者の意識変化等を通じて、再生エネルギー・資源循環に代表される新たな市場やビジネスモデルの創出をもたらします。当社では、これを投資機会として捉え、持続可能な社会への移行を後押しすると同時に、顧客資産の成長を実現するため、ESG投資に反映します。

4.社会

概要
当社は、国連責任投資原則の署名運用機関として、投資先に対して、国際的に支持された法令や規範の遵守のみならず、顧客や従業員、地域コミュニティ、世界中に拡がったサプライチェーンの構成員など、多様なステークホルダーの利害に配慮して活動することを求めます。また、人口構成の遷移やダイバーシティへの意識の深化にともない、企業等に求められる規範の水準は日々高まっており、持続可能な社会を実現し顧客資産の中長期の投資収益を確保するために、常に高いレベルを視野に入れた取り組みを求めていくことが必要です。

① 人権とコミュニティ
投資先の国際的な規範に対する遵守状況を重視します。サプライチェーンにおいては、労務環境の軽視や労働者に対する人権侵害等の不適切な行為がなされるリスクがあるため、労働と人権に関する国際的な基準に照らして投資先の人権デューデリジェンス等の取り組みを把握し、「公正な移行(Just Transition)」などの観点も併せて、ESG投資に反映します。

② 人的資本
経済のサービス化進展もあり、優秀な人材の確保、人材育成、従業員へのエンゲージメントなどが投資先のパフォーマンスを決する要素としてより重要です。当社では、従業員の多様性、包摂性、平等、人材投資、ウェルビーイングやモチベーション向上などを通じた投資先の価値向上への取り組みについても考慮し、ESG投資に反映します。

③ 安全と責任
サプライチェーンのグローバル化、デジタル化の急速な進展等、経済活動の複雑化が進むとともに、企業活動等のアウトプットである製品やサービスにおいて、顧客やその他の関係者に有形無形の損害がもたらされるリスクが増大しています。また、労働の安全性に対する国や企業の社会的責任も高まっています。当社では、そのようなリスクへの脆弱性やそれに対応する投資先の態勢について考慮し、ESG投資に反映します。

④ 社会関連機会
上記①~③の社会関連課題に対し、国際的な枠組みを通じた取り組みや政府レベルでの政策が講じられる結果として、経済や社会格差が解消に向かう過程において社会関連機会につながります。具体的には、SDGsの達成に必要な、医療、情報通信、金融などの基本的サービスが不足している地域・人々へ展開されることで、新たな市場やビジネスモデルの創造をもたらします。当社では、これを投資機会として捉え、持続可能な社会への移行を後押しすると同時に、顧客資産の成長を実現するため、ESG投資に反映します。

5.ガバナンス

概要
投資収益は、投資国や投資対象企業が投資家を中心としたステークホルダーとその利害を一致させた上で、その目的を達成することによって得られるものです。そのための最も基本的な仕組みがガバナンスであり、顧客資産の中長期の投資収益を確保する上では、全ての投資先について共通の重要事項として考慮することが必要です。

① 企業行動
企業等がステークホルダーの利害を意識した運営を行っているかは、具体的な企業行動等の中に表われます。当社では、資本効率や情報開示といった具体的な行動を考慮し、ESG投資の決定に反映します。情報開示については、全てのESGテーマにわたって、その活動の出発点となることから特に重視して考慮します。

② 組織設計
ガバナンスは、一義的には国の法規制や企業の組織設計によって客観的に表現されるべきものです。当社では、コーポレートガバナンスにおいては、取締役会構成および取締役の多様性、報酬制度、買収防衛策、株主構成などとともに、産業や国・地域の特性も踏まえてその適切性を考慮し、ESG投資に反映します。

③ 安定性と公正さ
国や企業においては、意図的な法令違反から偶発的な事故に至るまで、組織内外にネガティブな影響を与える事態が発生する可能性があります。そうした問題への対応が内容や迅速性において不十分な場合、社会に不利益を与えるとともに、国の信用度や企業価値を大きく損なうこととなります。当社では、これらのリスクに適切に対処するために、政治の安定性と公正さ、企業における行動規範や、予防策も含めたリスク管理態勢とコンプライアンス等に係る企業風土などを考慮し、ESG投資に反映します。

④ ガバナンス改善
ガバナンスは国や企業による社会・経済活動の根幹に位置付けられるものです。ガバナンス改善と高度化は、国や企業にとって持続性向上や新たなビジネス機会に取り組む原動力であり、すなわち投資収益の向上につながることが期待されます。当社では、これを投資機会として捉え、顧客資産の成長のため、ESG投資に反映します。

Ⅲ ESG投資手法と自社ESGスコア

1.自社運用商品におけるESG投資手法

ESG投資を行う際のESG投資手法を以下①から⑦に定義します。

① ESGネガティブスクリーニング
非人道的な兵器の製造や国際規範への抵触など、ESGの観点で著しい問題のある企業等を、一定の基準で投資先から除外します。

② ESGポジティブスクリーニング
各セクター内でESG評価が高い企業等に積極的に投資します。

③ ESGに関する情報のインテグレーション
ESGを含む非財務情報を分析・評価して得た知見を、各ファンドの銘柄選択、およびポートフォリオ構築のプロセスに明示的かつ体系的に組み込みます。

④ テーマ投資
ESGに関するテーマを設定し、それに関連する企業等を中心に組み入れるファンドを組成し運用します。

⑤ インパクト投資
経済的な投資収益とともに、ESGの観点で社会に対してポジティブなインパクトを与えることを明示的な目的としたファンドを組成し運用します。

⑥ エンゲージメント
ESGのテーマについて、企業等にベストプラクティスを求める機会として、投資先企業等との建設的な対話を通じて、中長期的な価値向上を図ります。

⑦ 議決権行使
投資先の議決権行使において、議案への賛否にESGの要素を反映させることを通じて、投資先にミニマムスタンダードの実現と価値向上を図ります。

2.自社ESGスコア

自社ESGスコアとは、顧客(受益者)の中長期的な投資リターン(投資収益)の最大化やダウンサイドリスクの抑制を目的として、国や企業等に対してESG課題が与える機会やリスクへの影響を分析し、投資家視点でESGの観点から付与する当社の投資評価指標を指します。
当社が定めたESGマテリアリティに基づいたESG評価を用いて、投資ユニバース等に対して自社ESGスコアを付与し、継続的にレベルアップを行います。
自社ESGスコアについての具体的な扱いは、別途当社の関連規程類において定めます。