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春山昇華の豊健活教室

どうなる金利と株 リーマンショック後の30年を読む

第9回 黒田日銀の実質利上げ

2019年02月08日

2014年10月に米国のFRB(米連邦準備理事会)はQE3(量的金融緩和第3弾)を終了させ、金融緩和政策の節目を迎えた。
黒田日銀も2017年秋から異次元金融緩和の縮小を模索してきた。金融政策自体は「維持」を貫きつつ、そのなかでも市場に対しては「そろそろ金融緩和の縮小がある」と匂わせてきた。

一方の市場関係者は「金融緩和の一層の拡大」を望んでいた。
市場の言い分は「金融緩和は強化してこそ効果が出る。『維持』ということは相場にとってはインパクトがなく、とくに株式市場はガッカリする」というものだった。

そして、2018年1月の日銀の金融政策決定会合前には、「黒田総裁は金融緩和の縮小を匂わせるが、インフレ率は伸び悩んでおり、今回は追加金融緩和があるのではないか」と、市場関係者の一部は追加緩和を期待していたと春山は考えている。しかし、金融政策決定会合後の黒田総裁の記者会見は「政策はこれまで通り『維持』する」と、彼らの淡い期待に応えることなく、その後の日本株下落の一因になった。

その半年後、2018年7月31日の金融政策決定会合で、黒田日銀はついに実質的な利上げに踏み切った。市場は、「米中貿易戦争もあり不安がいっぱいだ」という反応を示した。

実質的な利上げの内容は、「ゼロ%に張り付かせていた10年国債金利が0.2%程度まで上昇することを容認する」というものだ。
それを受けて翌日の債券市場は「ルビコンを渡るような」金利上昇を見せた。

日本の10年国債利回り

しかし、金利が上昇したとはいえ、引き続きその水準は異常とも思われるほどの低水準にある。円高デフレで日本経済が塗炭の苦しみにあえいでいた時期よりも低い水準だ。
とはいっても、日本経済が何ごともなく、今のままゆっくりと回復し正常化しさえすれば、10年国債金利が1%を超える水準になってくると春山は考えている。

むしろ現状で日銀が懸念すべきは、この超低金利の状態で国内外のどこかで金融危機が起こることである。その際、「金融緩和で対応する必要」が生じたら、金利水準をさらに引き下げる余地は乏しく、日銀としては手の打ちようがない、ということだと思う。その前に経済が正常化することを願う次第だ。

今回のまとめ
7月31日、黒田日銀は実質的な利上げに踏み切ったが、依然として金利水準はアベノミクス以前の苦難の時期よりも低い。
この金利水準の状態で金融危機が起こったら、日銀としては手の打ちようがない。

第10回「さらなる利上げが可能な経済なのか?(日本の雇用)」は、2月15日(金)に掲載予定です。
2018年7月31日の実質利上げ後の日本経済は、さらなる実質利上げが可能な状態なのだろうか?

  • 金融政策決定会合(2018年7月30・31日)において、「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし(後略)(出所:日本銀行)」と決議された。また、会合後の記者会見において黒田総裁は、その変動幅について「従来±0.1%くらいの狭い幅で動いていましたが、その倍くらいの幅を念頭において考えていく(出所:日本銀行)」と発言した。
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執筆者プロフィール

春山 昇華(はるやま しょうか)
1978年京都大学法学部卒。87年から英国・ロンドンにて株式と債券による国際分散投資に従事。オフショア登録ファンドでトップの成績を記録。帰国後は、国内系・外資系の投資顧問会社などで年金基金の運用に従事したのち、投信の立ち上げと内外株式のCIOなど多彩な活躍。
個人投資家による投資立国の必要性を感じ、投資知識の普及を目指して96年よりネットで情報を提供する。現在は個人投資家を対象に春山ゼミを主宰するとともに、企業向けのアドバイスも行っている。
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