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春山昇華の豊健活教室

どうなる金利と株 リーマンショック後の30年を読む

第10回 さらなる利上げが可能な経済なのか?(日本の雇用)

2019年02月15日

黒田日銀は2018年7月31日に実質的な利上げに踏み切った。
足元の経済状況は追加の利上げが可能な経済なのか?
日本経済の「人(=雇用)」、「物(=物価)」、「金(=金利)」の三点をチェックしてみたい。

一つ目のチェックとして「人(=雇用)」を見てみよう。

いわゆる“アベノミクス”によって日本経済は復活した。
2013年1月から2018年11月の間で総労働者数は9.3%増加しており、完全失業率がバブル期に肉薄するほど雇用は改善している。人手が足りないという悲鳴があちこちから聞こえてくる。

  • 総務省統計局「労働力調査」の「役員を除く雇用者数」を基に算出

景況感の改善で企業が積極的に正規雇用、非正規雇用に関わらず賃金労働者を採用している様子が見て取れる。

雇用者数推移


この間、平均賃金も上昇しており、日本国内の支払賃金総額は増加している。景気回復の恩恵で企業の利益が増加したことが要因である。

賃金水準推移


このような状況にも関わらず、「私には景気回復の恩恵がない」という不満報道が多い。その背景は以下のようなものだ。

  1. 不満者は外に向かって文句を表明したがるが、満足者は妬まれる恐れがあるため黙っている
  2. メディアは不満者を報道する方が視聴率やPV(=ネットの閲覧数)を稼ぎやすい
  3. 不満者は主に正規労働者であり、彼らの賃金の伸び率は非正規労働者に比べて小さい
  4. 正規労働者は、社会保険関連の負担の増加率が高いことから税金と社会保険料の控除後では賃金の伸びを実感できない
非正規労働者と正規労働者


正規雇用、非正規雇用の雇用形態の違いが改善の恩恵を見えにくくしているが、非正規労働者を中心に雇用は着実に改善している。
日本の「雇用」という観点からは利上げを正当化できそうだ。

企業にとっては、賃金が上昇したとはいえ、いまだに割安な非正規労働者の賃金を引き上げて採用する方が、正規労働者を採用するより経営コストは安価である。
非正規労働者は景気が悪化すると、人員調整が可能な雇用形態であり、企業にメリットが大きい。

なお、政府が推進している「同一労働同一賃金」については、国内で支払われる賃金総額が不変であるなら、正規労働者の賃金を下げ、非正規労働者の賃金を増やすことになる。
それゆえ、既得権者である正規労働者と労働組合は反対し、企業経営者も社内の混乱を恐れて制度の採用をためらっている。

今回のまとめ
景気回復の恩恵で企業の利益が増加した結果、日本国内での支払賃金総額は増加した。
正規雇用、非正規雇用の格差問題が景気回復と賃金上昇の恩恵という好循環を見えにくくしているが、非正規労働者を中心に雇用環境は着実に改善している。
日本の「雇用」という観点からは利上げを正当化できそうだ。

第11回「さらなる利上げが可能な経済なのか?(日本の物価)」は、2月22日(金)に掲載予定です。
雇用は逼迫している中、日銀の物価目標は未達成が続いているが・・・

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執筆者プロフィール

春山 昇華(はるやま しょうか)
1978年京都大学法学部卒。87年から英国・ロンドンにて株式と債券による国際分散投資に従事。オフショア登録ファンドでトップの成績を記録。帰国後は、国内系・外資系の投資顧問会社などで年金基金の運用に従事したのち、投信の立ち上げと内外株式のCIOなど多彩な活躍。
個人投資家による投資立国の必要性を感じ、投資知識の普及を目指して96年よりネットで情報を提供する。現在は個人投資家を対象に春山ゼミを主宰するとともに、企業向けのアドバイスも行っている。
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