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春山昇華の豊健活教室

どうなる金利と株 リーマンショック後の30年を読む

第11回 さらなる利上げが可能な経済なのか?(日本の物価)

2019年02月22日

日本経済が利上げを許容できる状態であるかは、「人(=雇用)」、「物(=物価)」、「金(=金利)」の三点をチェックすることが重要である。

2つ目のチェックとして「物=物価」を見てみよう。

一般的に、景気が回復局面で需要が供給を継続的に上回ると、インフレが起こるといわれている。

インフレが生じるプロセスは、消費意欲が高い環境下で人(従業員)、物(製品サービスを作るための資材)、金(ビジネス拡大に必要な資金)を確保する競争、つまり「人、物、金の取り合い」が起こると、その結果として人・物・金の価格(賃金、資材価格、金利)が上昇、その上昇が製品価格に転嫁されることでインフレが起こる。

人、物、金の取り合い


2010-2011年に世界的なインフレが発生したが、リーマン・ショックによる世界経済の低迷の悪影響を懸念して、主要国が財政支出をしたことがその要因と考えている。
例えば、中国は4兆元の経済対策という大規模な財政出動を実施した。中国の財政出動は「インフラ投資や国有企業の大規模設備投資などの箱もの投資」に重点が置かれ、鉄やセメントといった資材を大量に買い漁った。
結果、「資材の取り合い」による価格上昇が起きた。
経済対策は「大規模な環境破壊」「汚職の蔓延」という副作用を引き起こした。経済成長の恩恵に浴さない大多数の中国国民は、拡大する貧富の格差と水や空気が耐えられないほどに汚染された居住環境への不満などから、各地でデモを頻発させた。

そのような民衆の不満を感じつつ2013年にスタートした習近平政権は、汚職撲滅、綱紀粛正、省エネ、環境改善に関する政策を打ち出した。その政策は経済成長を抑える要因となり、資材価格は経済が好調であった2005年~2008年頃の水準に戻る可能性が低いと判断されるようになった。

商品指数


国内のみで取引される資材は、国内の需給で価格が決まる。
しかし、多くの資材は国際的に取引されており、世界経済の帰趨で価格が変動する。

日本はアベノミクスの始動により、悲惨な「円高&デフレ・スパイラルの悪循環」から脱することができた。
しかし、2015年6月の黒田日銀総裁の「過度な円安を牽制」とも受け取れる発言や、その後の原油を始めとする資材価格の下落などを契機に、120円から100円方向への円高に転換してしまった。

「円高+資材価格下落+中国経済の不振」により、資材(ガソリン、電気、ガス、素材製品など)の日本国内での物価が下落に転じ、政府と日銀が目指すインフレ+2%の目標には到達していない。
その後の消費者物価指数はぎりぎりプラス領域を維持する状態が今日まで続いている。
国内の物価が上昇しないのは日銀の金融政策やアベノミクスが失敗したわけではない。外部経済環境が大きな逆風に転じたことが主要因である。

現在の日本経済は、アベノミクス、外国人観光客の大幅増加、2020年のオリンピックに向けた大規模なインフラ投資といった“国内経済活性化要因”により好転している。
しかし、そういう“国内経済活性化要因”は、中国をはじめとする世界経済のモメンタム低下という“国際経済沈静化要因”を打ち消すには物足りない。

足元の日本の物価水準では、利上げは正当化できそうにない。

今回のまとめ
日本はアベノミクスの成功で「円高&デフレ・スパイラルの悪循環」から脱することができた。
しかし“国内経済活性化要因”は、中国をはじめとする世界経済のモメンタム低下という“国際経済沈静化要因”を打ち消すには物足りない。
足元の日本の物価水準では、利上げは正当化できそうにない。

第12回「さらなる利上げが可能な経済なのか?(日本の金利)」は、3月1日(金)に掲載予定です。
米中貿易戦争で世界経済の先行きに懸念が広がっているが・・・

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執筆者プロフィール

春山 昇華(はるやま しょうか)
1978年京都大学法学部卒。87年から英国・ロンドンにて株式と債券による国際分散投資に従事。オフショア登録ファンドでトップの成績を記録。帰国後は、国内系・外資系の投資顧問会社などで年金基金の運用に従事したのち、投信の立ち上げと内外株式のCIOなど多彩な活躍。
個人投資家による投資立国の必要性を感じ、投資知識の普及を目指して96年よりネットで情報を提供する。現在は個人投資家を対象に春山ゼミを主宰するとともに、企業向けのアドバイスも行っている。
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