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春山昇華の豊健活教室

どうなる金利と株 リーマンショック後の30年を読む

第12回 さらなる利上げが可能な経済なのか?(日本の金利)

2019年03月01日

日本経済が利上げを許容できる状態であるかは、「人(=雇用)」、「物(=物価)」、「金(=金利)」の三点をチェックすることが重要である。

3つ目のチェックとして「金」を見てみよう。

日本の短中期国債は、長らくマイナスの利回りになるなど金利は異常な低水準となっている。
利回りがマイナスの債券に投資をすると、投資期間を通じた受取金額は投資元本を下回る。それでも、債券市場は拡大の一途をたどっている。
異常に思える低金利だが、この環境が長期化しているのには「それ相応の理由」がある。その理由は、主に3つの主体の要因に集約される。

1.お金を欲する需要サイドの景気動向要因

企業は、景気動向により資金需要量が変動し、資金調達コスト、つまり金利が変動する。
2005年~2008年の新興国、資源エネルギー、重厚長大産業が好調であった時期が終わると、製造業を中心に過剰設備が顕著になり、新たな投資に付随する資金需要が低下し、債務の返済を進め金利も低下した。
アベノミクスなどにより資金需要に改善が見られているが、足元は力強さがなく、需要サイドからは金利上昇を許容することが難しい。

2.お金を提供する供給サイドのマネー要因

投資家は、投資環境のリスク水準により要求する利回り水準が変わる。
2005年~2008年の好況期の投資家はリスク・テイク意欲が旺盛で、高い投資利回りを求め多少リスクが高い金融商品や割高と思える投資案件であっても意に介せず、湯水のごとく資金をつぎ込んだ。
2009年に景気が後退に転ずると大損をしてしまい、「羹(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹く」状態に変化して、極端にリスクを回避するようになった。国債のように低金利あるいはコストを支払ってでも安全と思われる債券市場に多くの資金が滞留し続けている。
国内の民間金融機関は、金利がマイナスになってもリスク配分を主要因として債券投資を続け、企業や家計は金利の高低に関わらず必要な資金を銀行預金として維持している。
投資家がリスク・テイクできずに低金利を甘受する環境であることから、供給サイドからは金利上昇の圧力が少ない。

3.中央銀行サイドの金融政策要因

中央銀行の金融政策は金利に大きな影響を与える。
なかでも黒田日銀の低金利政策はパワフルだ。異次元緩和(国債の大量購入)、リスク資産購入(株式ETFとJ-REIT)、マイナス金利政策、長短金利操作政策と、市場の「金融緩和はもう限界だ」という限界論を跳ね返して、前代未聞の金融緩和政策により資金を供給し、金利を低下させた。
2018年7月31日に黒田日銀は実質的な利上げを行ったが10年国債利回りの許容範囲を“0%±0.1%から0%±0.2%”へとわずかに拡大させたにすぎない。
中央銀行サイドの金融緩和政策の方針変更による金利上昇は、今のところなさそうだ。

  • *「黒田日銀の実質利上げ」については第9回をご参照ください。
3つの要因が相互に関連し、大幅に金利を低下させた

これら3つの要因が相互に関連しながら金利を大幅に低下させてきた。
それゆえ、現在の異常に思える低金利は「異常ではなく、当然の帰結」である。
換言すれば、異常に思える低金利が上昇に転ずる時は、上記3つの主体の行動に変化が生じた時だろうし、その時は金利が上昇に転ずるのは当然の摂理だと理解すべきだろう。

足元では、金融政策にわずかな変化が見られるが、「金」の面からは利上げは難しそうだ。

今回のまとめ
景気後退による企業の資金需要の低下、債券投資家の極端なリスク回避姿勢、中央銀行の大量の資金供給などが合わさって、金利はマイナスまで低下した。
金融政策にわずかな変化が見られるが、金の面からは利上げは難しそうである。

第13回「長期金利のメガトレンド」は、3月8日(金)に掲載予定です。
1980年代から景気の上下動を超越して世界の長期金利は下がってきたが・・・

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執筆者プロフィール

春山 昇華(はるやま しょうか)
1978年京都大学法学部卒。87年から英国・ロンドンにて株式と債券による国際分散投資に従事。オフショア登録ファンドでトップの成績を記録。帰国後は、国内系・外資系の投資顧問会社などで年金基金の運用に従事したのち、投信の立ち上げと内外株式のCIOなど多彩な活躍。
個人投資家による投資立国の必要性を感じ、投資知識の普及を目指して96年よりネットで情報を提供する。現在は個人投資家を対象に春山ゼミを主宰するとともに、企業向けのアドバイスも行っている。
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