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春山昇華の豊健活教室

どうなる金利と株 リーマンショック後の30年を読む

第21回 中央銀行の金融政策と政治の衝突

2019年05月10日

政治家は自分の任期中の経済の状態を極端に重視する。次の選挙で再選されなければ政治家から、ただの人に陥落してしまう。
だから長期的には“悪”であっても、有権者に媚びて次の選挙に勝てるような行為をすることがある。これは古今東西の政治家の習性だからある程度は仕方が無い。政治家は民主主義を代表する存在だから、今の生活、今の経済を重視する有権者の意向を無視できない。

一方、中央銀行は金融や経済の論理に基づいた、長期にわたる安定的な経済の発展に資する行動をする。中央銀行は資本主義を代表する存在なのだ。

民主主義は「資本主義の理不尽さ」を強く意識し始め、暴走して強欲になった資本主義がもたらした災難(=リーマン・ショック)とその責任を負いきれない金融機関に怒りを感じた。経済合理性や生産性の観点から満足できるルールであったとしても、大多数の人間が受け取る果実が不満足ならルールを変えるべきだと考える。プロセスよりも短期的な結果重視、狭い範囲の利益を重視する反グローバリズムの傾向が強まった。

このような傾向の中で、民主主義は寛容性を後退させたのだ。資本主義が強欲になって労働者を取るに足りない存在と見下した事に対する民主主義側の反抗とも言えるだろう。
民主主義の代表である政治家は、このような有権者の意向を受けて行動せざるを得ない。そうしないと次回の選挙で落選するからだ。

寛容性を失った民主主義の要求に呼応する政治家だが、負担なきバラ撒きの拡大、金融の引き締めに対する政府の強固な抵抗姿勢、となって表れている。

インドでは、モディ首相(2014年5月就任)に反抗するインド中央銀行総裁を連続で実質的な解任をしている。2016年9月にはモディ首相のヒンズー至上主義を非難したラジャン総裁を、通例とは違って再任させなかった。また、2018年12月には2019年の選挙を有利にするためのバラ撒き資金の拠出を求めたが、拒否したパテル総裁を事実上の解任に追い込んだ。

米国の利上げ、インドのバラ撒き資金の拠出拒否も健全な資本主義の発展に資する行動である。
しかし、政治家はそれが「民意に反している」と感じて我慢ならないのだ。 米国でもインドでも、「資本主義は民主主義に隷属すべきだ」という政治家の考え方が噴出してきたのだ。

生活を支える金銭獲得能力に関しては、民主主義は格差に対する不寛容の度合いを増している。そして、経済的な結果の平等に対する民主主義側の要求は、自国主義、地域主義、異文化や移民の拒否、宗教的な対立などと結びついて「不寛容な民主主義」を強めていく可能性がある。

資本主義は経済合理性と、効率性による最適化を善とする「勘定の世界の生き物」だが、民主主義は嫌なものは嫌だという客観性を欠いた「感情の世界の生き物」という性格を持っている。

中央銀行は、今後長期間にわたって、不寛容になり自己主張を強めた民主主義との衝突に直面し続けるだろう。

今回のまとめ
リーマン・ショックと責任を負わない金融機関に怒りを感じて、民主主義は不寛容になった。ルールがフェアであっても、受け取る果実が不満足ならルールを変えるべきだと考える傾向が強まった。中央銀行は不寛容になり自己主張を強めた民主主義との衝突に直面し続けるだろう。

第22回「金利の決まり方(前編)」は、5月17日(金)に掲載予定です。
金利は誰がどうやって決めているのだろう・・・

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執筆者プロフィール

春山 昇華(はるやま しょうか)
1978年京都大学法学部卒。87年から英国・ロンドンにて株式と債券による国際分散投資に従事。オフショア登録ファンドでトップの成績を記録。帰国後は、国内系・外資系の投資顧問会社などで年金基金の運用に従事したのち、投信の立ち上げと内外株式のCIOなど多彩な活躍。
個人投資家による投資立国の必要性を感じ、投資知識の普及を目指して96年よりネットで情報を提供する。現在は個人投資家を対象に春山ゼミを主宰するとともに、企業向けのアドバイスも行っている。
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