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退職間近になると、確定拠出年金の受け取り方が気になるという方も多いでしょう。会社の退職金に加え、DC(企業型確定拠出年金)の受け取りができる人、DCのみの受け取りとなる人、退職金制度がないので、自力で頑張ったiDeCo(個人型確定拠出年金)を受け取るという人など、それぞれの条件のもとで受け取り方を考えることになります。
受け取りかたには3パターンあります。一時金、年金、一時金と年金の併用です。どれを選択するかは、節税効果を重視するのか、老後の月々の生活費をどのように管理したいのか、その人ごとの考え方によって異なってきます。一時金を選択した場合は退職所得控除が利用できるため、一般に節税効果が高い受け取り方と言えそうです。ただし、ローン返済などが無いケースでは一度にまとまった金額が入るので、無計画な使い方をしないように自ら計画的に管理していく必要があります。
年金で受け取ると公的年金等控除が利用できますし、受け取り期間は5年以上、20年以内で柔軟に選択きることから、自らのライフスタイルに合わせた計画的な受け取りが可能となります。一時金と年金を併用すると、両方の税控除を利用できるので、課税されずに退職金とDCまたはiDeCoを受け取ることが可能なケースが多くなります。
再雇用で働くNさん(61歳)は、まだ受け取りを開始していないDCの約900万円だけが退職金です。現役時にできた貯金は約800万円です。老後資金は合わせて1,700万円ほどとなるのですが、DCの受け取りをいつからにしたら良いか迷っています。働くことができている今はNさんが約21万円、パートで働く妻が約8万円の手取り収入を得ています。毎月の生活費は約30万円ほどですから、なんとか暮らせている状況です。ですが、夫婦ともに年金生活に入ると、受給額の見込みは月に約20万円。将来を考えると、暮らしが成り立つのかが心配です。
DCの受け取り方を考える前に、まずは現状の生活費のうち無駄な支出がないのか、見直しや代替の余地がないのか、十分に検討してみることが大切です。Nさんの場合、節税効果を重視するのであればDCを一時金で受け取ったほうが良さそうです。しかし年金生活以降、月々に計画的に貯金を取り崩してくといった管理が面倒だという考え方もあります。税金面で不利となったとしても、DCを年金形式で受け取ったほうが生活のプランを立てやすく、結果として浪費や過度な節約を避けることができるといった考えかたもありそうです。
可能であれば年金とDC受け取り額で生活できるように支出を整えておき、今ある貯金は手をつけず、病気治療や介護が必要になった時に使えるように備えておくことが理想です。
Nさんの場合、DCを20年で受け取るのなら単純計算で月々3万7,500円、15年にするなら月々5万円となります。65歳から受け取り開始すると場合、20年受け取りなら85歳まで月24万円弱、15年受け取りなら80歳まで月25万円程度を生活費として使えることになります。無論、DCの受給終了後は、年金の20万円だけとなりますので、それ以降の暮らし方も考えておく必要はあります。
このように考えていくと、60歳で定年した後なら、65歳の年金受給開始までは貯金や退職金をあてにせず長く働いて、その収入で暮らすことが、老後資金を長持ちさせるためには大切であることがわかります。加えて、必要な支出以外も出来るだけ圧縮し、貯金からの補填が少なくて済むような暮らし方をすることが、老後を豊かに暮らすためには必要です。
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