三井住友トラスト・アセットマネジメント
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三井住友トラスト・グループ

TCFDに基づく気候関連財務情報開示

代表取締役会長・取締役会議長
デービッド・セマイヤ

2019年2月、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures 以下、TCFD)の提言に賛同しました。ここでは、同提言に従って当社が実施していく気候変動問題に関する対応の方針についてご説明いたします。

当社では、環境・社会・ガバナンス(以下、ESG)に関する重要な課題が、お客さまからお預かりしている運用資産の長期的なリターンに影響を及ぼすと考えています。とりわけ気候変動問題に関しては、その影響が確実に顕在化し始めており、投資先の企業価値にインパクトを与え始めています。よって、自社の温室効果ガス排出量削減のみならず、投資先企業の気候変動に係る潜在的な収益機会やリスクを評価することが重要であると考えており、投資判断プロセスに反映する他、事業経営に活かす取り組みを行っています。

当社の気候変動問題への取り組み

気候変動問題とは、主に人為的な経済活動を主因として地球規模で温暖化が進行した結果生じるさまざまな現象です。地球温暖化による天候パターンの変化が生態系の変化や食糧・水・健康・経済などへの被害をもたらし、持続的な社会・経済活動に悪影響を及ぼします。
2016年11月に発効した「パリ協定」では、地球規模の持続可能性を確保するために「地球の平均気温の上昇を産業革命以前から2度より十分下方に抑え、さらには1.5度に抑える努力をすること」を国際的に合意しました。当社はこの「パリ協定」の趣旨に賛同しており、目標達成に資する取り組みとして、2021年7月、2050年までに投資先企業の温室効果ガス排出量ネットゼロを目指す資産運用会社によるグローバルなイニシアチブである「Net Zero Asset Managers initiative(以下、NZAMI)」に参画しました。さらに2022年5月には、2030年時点に達成するべき中間目標も設定し発表しています。

しかしながら、気候変動問題の影響は確実に顕在化し始めています。2023年3月に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した第6次統合評価報告書では、改めて、地球温暖化の原因が我々人類の活動に基づくものであり、2100年までの気温上昇を1.5度以内に抑制するためには「この10年」の温室効果ガス排出量削減努力が極めて重要としています。2023年5月にロンドン市が主催する「Net Zero Delivery Summit」という世界の金融機関や政策当局がネットゼロ社会実現に向けた政策を議論する会合にパネリストとして参加してきました。そこでは企業のネットゼロ社会に向けたトランジション(移行)の加速がメインテーマであり、民間資金の動員や投資先とのエンゲージメント(建設的な対話)の重要性について活発に議論してきました。改めて、ネットゼロ社会の実現に果たす運用会社への期待の大きさと重要性を認識しています。こうした背景もあり、当社は責任ある投資家として気候変動問題の解決の一助となるべく、温室効果ガス排出量削減についてグローバルレベルでインパクトの大きい企業群に対し効果的なエンゲージメントを推進するとともに、議決権行使ガイドラインに同問題に係る基準を導入しています。
また、前述のNZAMIはグラスゴー金融同盟(Glasgow Financial Alliance for Net Zero 以下、GFANZ)と呼ばれるネットゼロ社会の実現を推進する金融機関の有志連合の一角を占めていますが、そのGFANZがアジア太平洋地域のネットゼロへの移行を支援するための支部(Country Chapter)を日本に設立し、2023年6月から活動を開始しています。当社はコア・ワーキング・グループメンバーとして設立当初より参画し、以来、他の金融機関と共にアジア太平洋地域のトランジションのあり方について議論を重ねています。このように世界的にネットゼロ社会に向けたトランジションの重要性の認識が高まり、企業のトランジションを長期的に推進するために投資家が果たす役割に注目が集まっています。

当社は、気候変動問題は中長期的に地球環境を取り返しのつかない状況に悪化させ、時間の経過とともに投資先の企業価値に大きな影響をもたらす可能性があるという考えに基づき、変化に柔軟な対応をしつつ、長期的に気候変動問題に取り組むことが重要だと考えています。このような大局観のもと、お客さまからお預かりしている資産の中長期投資リターンの最大化やダウンサイドリスク抑制という受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)を全うし、国際社会が直面する最大の課題の一つである気候変動問題に対する各種活動と情報開示を強化しています。

詳しくはこちらのp69~84をご参照ください。