当社は、2020年3月に改訂された「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫(以下、本コード)を踏まえ、当社の「スチュワードシップ責任に関する対応方針」および「日本版スチュワードシップ・コードの原則への対応方針」を更新しました。当社は、日本有数の機関投資家として、スチュワードシップ責任を適切に果たしてまいります。
当社経営陣は、独立した外部有識者が過半を占めるスチュワードシップ活動諮問委員会の設置等の運用業務に関する利益相反管理態勢の高度化を推進しています。また、親会社である三井住友トラスト・ホールディングスは、グループ横断の「フィデューシャリー・デューティ協議会」を通じ、グループ全体のスチュワードシップ活動の高度化に取り組むなど、スチュワードシップ責任を実効的に果たすための役割を率先して実行しています。
機関投資家は、建設的な「目的を持った対話」(以下、エンゲージメント)等を通じて、投資先企業の企業価値向上や持続的な成長を促すことにより、顧客(受益者)の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任(スチュワードシップ責任)を負っています。当社は、本コードの趣旨を踏まえ、企業の状況の把握、エンゲージメント、受託資産に関する議決権行使(以下、議決権行使)などのスチュワードシップ活動を通じて、投資先企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客(受益者)の中長期的な投資リターンの最大化を図ってまいります。同時に、スチュワードシップ責任を果たすため、適切に利益相反管理を行ってまいります。
原則1:機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
当社は、「スチュワードシップ責任に関する対応方針」に基づき、スチュワードシップ責任を果たしていきます。
当社は、受託資産の運用に際して、スチュワードシップ責任を負っています。当社は、このスチュワードシップ責任を全うするために、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解、および運用戦略に応じたサステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)の考慮に基づくエンゲージメントや議決権行使を通じて、当該企業の企業価値向上やその持続的成長を促すことにより、顧客(受益者)の中長期的な投資リターンの最大化を目指します。
当社は、投資先企業の事業構造や業界環境などを深く理解するリサーチ運用部のアナリストに加え、経験豊富なシニアアナリストをスチュワードシップ活動の専任としてスチュワードシップ推進部に配置し、財務情報に加え、社会・環境問題、コーポレートガバナンスなどのESG要素を含む非財務情報の分析を行い、受託資産の運用に際して質の高いエンゲージメントや議決権行使を行います。
当社は、日本有数の機関投資家として、スチュワードシップ責任を社会的責任と考え、スチュワードシップ責任を適切に果たすことを通じて、日本経済全体の成長につながる役割を果たしてまいります。
原則2:機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
当社は、スチュワードシップ責任を果たす上で「利益相反管理方針」に基づいて適切に利益相反管理をしていきます。
当社は、「信託の受託者精神に立脚した高い自己規律に基づく健全な経営を実践し、社会からゆるぎない信頼を確立」するというグループ全体の経営理念(ミッション)のもと、グループ全体の利益相反管理態勢の高度化を進めるとともに、業務全般にわたりフィデューシャリー・デューティーを徹底して実践しています。
スチュワードシップ活動に関して生じ得る利益相反については、顧客(受益者)の利益を第一とする観点から、社内規程である利益相反管理規程、投資運用業務規則およびその他関連規程類に沿って、厳格な管理を行っています。また、これら利益相反管理規程に定める方針の概要等について公表しております。
当社では、スチュワードシップ推進部担当役員が、他の部門の執行権限から独立して、議決権行使に関する全ての権限を専属的に有することで、議決権行使に関して生じ得る利益相反を排除しております。利益相反とは具体的には、取引先の重要性、取引の広範性等に起因する他の部門から運用部門への影響力行使であります。また、スチュワードシップ活動に関して、独立性の担保された外部有識者が過半を占める「スチュワードシップ活動諮問委員会」(以下、諮問委員会)を設置しています。諮問委員会は、本コードに基づく各種活動の答申を行う機関であり、当社議決権行使ガイドラインの制定や改廃、同ガイドラインに規定のない議案の賛否判断、個別議案における同ガイドライン解釈の適切性、利益相反が起こり得る議案の行使判断プロセスの検証・改善等に関する答申を行います。 スチュワードシップ推進部担当役員は、諮問委員会の答申を最大限尊重して諸事項の決定を行い、また、同委員会より議決権行使に係る改善に関する答申を受けた場合は、かかる答申を最大限尊重し、速やかに必要な是正・改善措置を講じます。
利益相反管理方針(概要)
原則3:機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
当社は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、投資先企業の状況を的確に把握します。
当社では、投資先企業を評価する際に中長期的な視点が重要と考えています。このため、業績等の財務情報に加えて、ESG関連情報や、投資先企業個々の経営力、事業基盤、対象市場動向、事業戦略と実行力・改革力など、持続的成長に関連が深い非財務情報の的確な把握に努めます。こうした調査や評価の活動を継続的に行うことにより、投資先企業の状況の実効的な把握に努めます。
また、投資先企業の企業価値を毀損する可能性のある環境変化、法制面の変更のほか、不祥事、不正会計、事故などによる信用リスクの悪化についても、当社運用部門内の調査により早期の把握に努め、受託資産の毀損を可能な限り回避するよう努めます。
原則4:機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
当社は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めます。
当社では、企業アナリストなどが投資先企業の経営陣や経営企画、財務担当者らと継続的に接触を行い、当該企業の個別の実情や、運用戦略との整合性を考慮しつつ、投資先企業の持続的成長の観点からエンゲージメントを行い、当該企業の価値増大に向けて、当該企業との認識の共有に努めます。
当社は、投資先企業またはその経営者等による、株主利益を軽視する事態、不祥事、または中長期的な業績不振等の企業価値の毀損が発生した場合には、コーポレートガバナンス上で重要な問題が発生しているとみなし、コーポレートガバナンスの改善に資する内容でエンゲージメント、議決権行使を行います。また、不祥事が発生した企業には、再発防止策や改善策の実施状況、コーポレートガバナンス向上に向けた取り組みについて十分な説明を求めます。
有効なエンゲージメントを行うためにはしっかりとした非財務情報の分析が必要です。非財務情報の分析力の強化は、エンゲージメントの質の向上につながります。当社は、中長期的視点に立った対話を通じた問題解決の取り組みの高度化、議決権の適切な行使などの手段によって、スチュワードシップ責任を果たします。
なお、投資先企業との間で対話を行うに当たっては単独で行うことを基本としますが、有効なエンゲージメントを行うためには、他の機関投資家と協働して行うことが有益な場合もあり得ると考え、そのような場合には他の機関投資家と協働して投資先企業との対話を行なうこともあります。
また、当社では、企業との対話において未公表の重要事実を受領することを回避します。しかしながら、万が一、未公表の重要事実を受領したおそれのある場合は、社内規程に則り、厳格に情報を管理します。
当社のスチュワードシップ活動状況
原則5:機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。
当社は、投資先企業の持続的成長に資することを目的として、「三井住友トラスト・アセットマネジメントの議決権行使の考え方」に基づき議決権の行使を行うとともに、議決権の行使結果については、四半期毎に、全投資先企業を対象に、個別の投資先企業、個別の議案につき公表します。
当社は「責任ある機関投資家」として、議決権行使を重要なスチュワードシップ活動の一つと位置付けています。
議決権行使は、投資先企業の持続的成長に資するものであり、ひいては顧客(受益者)の中長期的な投資リターンの最大化を図ることを目的とするものでなければなりません。当社は、議決権行使について当社の議決権行使ガイドラインに沿った判断を原則としますが、投資先企業の状況や当該企業とのエンゲージメントの内容等を踏まえた上で、単に形式的な判断基準に基づく議決権行使を行うことにとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長(ひいては顧客(受益者)の中長期的な投資リターンの最大化)に資するかどうかを総合的に判断します。また、複数の変更項目が含まれた議案等においては、持続的成長に資する項目を優先した行使判断を行います。
また当社は、議決権行使ガイドラインについて数値基準、定性判断のポイント等を詳細に公表することで、行使判断の可視性を高めます。同ガイドラインについては、年1回以上の見直しを検討し、改廃の場合には諮問委員会への諮問、答申を踏まえ実施します。
議決権の行使結果については、四半期毎に、全投資先企業を対象に客観的情報に基づいて当社との取引の有無を明確に示したうえで、個別の投資先企業、個別の議案につき公表します。また、外観的に利益相反が疑われる議案、議決権行使の方針に照らして説明を要する判断を行った議案については議案毎の賛否の理由を公表します。なお、議決権行使を行った結果については全投資企業について四半期毎に集計の上、当社ホームページにて公表します。
原則として、議決権行使助言会社の助言サービスは利用しておりません。ただし、親会社株(三井住友トラスト・ホールディングス株)等については、利益相反管理の観点から、当社議決権行使ガイドラインに基づく議決権行使助言会社の助言を活用し、諮問委員会の確認を経て利益相反を適切に管理し、議決権を行使するものとします。その際、活用した議決権行使助言会社名を公表します。
貸株取引については、貸出限度を設けて議決権確保に留意します。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの議決権行使の考え方
国内株式議決権行使結果
原則6:機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。
当社は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任を果たすための行動について、顧客・受益者に定期的に報告を行います。
当社は、議決権の行使状況や企業との対話、諮問委員会の議事概要など、スチュワードシップ責任を果たすための活動状況について、当社ホームページなどを通じ、定期的に報告します。スチュワードシップ活動における議決権行使の状況や対話事例などについて記録を残します。また、顧客(受益者)への報告内容や形式については、そのニーズを反映し、適宜改善を図ります。
原則7:機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティの考慮に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。
投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティの考慮に基づき、投資先企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための能力向上・態勢の改善を図ってまいります。
当社は、投資先企業との対話を建設的なものとし、投資先企業の持続的成長に資する有益なものとしていくこと、および運用戦略に応じたサステナビリティの考慮を行うことにより、スチュワードシップ責任を果たしてまいります。そのためには、スチュワードシップ活動を適切に行うための実力を備えていることが重要と考えます。
当社では、スチュワードシップ責任を実効的に果たすため、経営陣が適切な能力・経験を備えているべきと考えており、その高度化に向けた取組みを継続してまいります。また、当社経営陣は、スチュワードシップ活動の実行とそのための組織構築・人材育成に関して重要な役割・責務を担っていると認識しており、これらに関する課題に積極的に取組んでまいります。
当社では、2016年12月に「スチュワードシップ活動推進室(現スチュワードシップ推進部)」を設置しました。スチュワードシップ活動は、当社の運用業務の根幹の一つであり、同活動の高度化が投資先企業の中長期的視野での企業価値を高め、当社が責任ある投資家として社会に責任を果たすことにつながると考えています。「スチュワードシップ推進部」は、当社スチュワードシップ活動に関する企画、広報、顧客対応等の業務を担うと共に、運用業務全般における同活動を束ねる役割を担います。「スチュワードシップ推進部」の設置によって、当社は、従来から運用業務が担ってきた議決権行使・エンゲージメント活動全般の更なる高度化を図ります。
当社では、このようなスチュワードシップ活動等の改善や、コーポレートガバナンスの体制、および利益相反管理の高度化において不断の努力を行うことが、受託者としてスチュワードシップ責任を全うするために重要だと考えます。また、「責任ある機関投資家」として、本コードの各原則の実施状況を定期的に自己評価するとともに、諮問委員会への諮問、その評価結果を公表することで可視性を確保してまいります。
当社のスチュワードシップ活動状況
当社はスチュワードシップ・コードの各原則に対し、以下の通り取り組んでいます。引き続き、スチュワードシップ責任をしっかりと果たしていきます。
※1 「責任ある機関投資家」の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》をご参照ください
※2 2023/2024STEWARDSHIP REPORTをご参照ください
※3 2022/2023STEWARDSHIP REPORTをご参照ください
※各種イニシアチブとの協業をご参照ください