ウィークリーレポート・マンスリーレポート
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家計相談を主たる業務とし、2万3,000件を超えていろいろな家計の話を聞いていますが、多く聞かれるのは「老後資金を作ることができるだろうか」ということ。そしてその背景には「年金が貰えなくなるのではないか」という不安があることも聞き取れます。
年金が貰えるのか、貰えないのか。貰えるとしたらいくらなのだろうか。そういう思いを抱いている人が多いのです。
毎年、誕生月になると「ねんきん定期便」が届きます。50歳未満の人は納付実績を基に計算した老齢年金の額が表示されています。50歳を超えると、60歳まで同じ年金制度に、同じ条件で加入し続けたものとして試算した見込額が記入されます。ですから50歳以上の人はしっかり確認しておくとよいでしょう。
30~40代のサラリーマンの中には、「年金は本当に貰えるの?」と本気で心配して聞く人もいます。これは、少々極端に捉えすぎかもしれません。年金が貰えなくなるということは、日本が破綻することを意味するも同然だからです。
今後、年金の受給水準や受給開始年齢は、今より不利な条件になることはほぼ間違いありません。だからといって、年金がゼロになるとは考えにくいです。厚生労働省は5年ごとに100年後までの年金財政の健全性を検証しているからです。
若い人の年金見込み額は、今後どう働いてどのくらいの収入を得るのか等により異なるため、的確に導くのは難しいものですが、現在の年金制度に今と同じ条件が継続した場合と前提をおいた試算であれば、「ねんきんネット」で取得できます。「ねんきんネット」はねんきん定期便に書かれているアクセスキーや基礎年金番号で登録することができますので、活用されるとよいでしょう。
また、年金の「お得な貰い方はあるのか」ということも、多くの人が気にするポイントです。早い年齢から貰うことができる「繰り上げ受給」や、受給時期を遅らせる「繰り下げ受給」が選択可能であるからです。繰下げについては受給開始年齢を上げようという議論がされているので、嫌でも耳に入っているかもしれません。
公的年金は基本的に65歳から支給が開始されます。60歳定年後の収入に不安があれば60歳からもらうこともできますし、生活費に困らないのなら70歳まで貰わないということもできます。
基本的には受給額は、早くもらう(繰り上げ受給)と減り、遅くもらう(繰り下げ受給)と増えます。
65歳から1カ月繰り上げるごとに0.5%減少します。仮に60歳0カ月から受給する場合、0.5%×60カ月(5年)で30%減少し、65歳開始の人の受給金額の70%の水準となります。
70歳まで繰り下げた場合は、1カ月毎に0.7%ずつ増えます。0.7%×60カ月(5年)で、65歳受給開始の受給額の142%の水準となります。
そして、受給時期を変更した後の受給水準が一生続くのです。
つまり、年金の受給開始は60~70歳の間で、自分で好きな年齢を選べますが、受給額は、もらい始める時期によって原則支給の65歳時点の受給金額と比べ、70%から142%と実に2倍も開いてしまいます。
このような仕組みになっていることを理解すると、多くの人は「繰り下げ受給をしたほうがよいだろう」と考えるのですが、現実の利用状況は少し違います。現状では、繰り下げ受給の利用率は1.3%ほど(年金制度基礎調査平成29年)です。繰り上げ受給は12%ほどで、利用した理由としては「生活ができない」「生活の足しにしたい」「早く貰うほうが得だと思った」というものがあげられます。
もし、受給を70歳まで繰り下げた場合、82歳まで生きれば“元は取れる”(65歳受給開始の場合の受給総額に追いつく)計算です。以後、亡くなるまで年金額はその原則支給額より42%増ですから、断然お得です。ですが、きちんと利用できるには「年金をもらわない間も生活がきちんとできる」準備ができていること、そして長生きできる健康であることが大きなポイントになります。
今も65歳までフルタイムで働く人が増えていますし、今後もますます増えることでしょう。その先も元気なら、70歳、またはそれ以上でも、週2~3日パートやアルバイトで働き、収入を得ることができます。今後、受給を70歳まで繰り下げるための工夫、ヒントのようなお話もしていきますので、ご期待ください。
年金で得をしたいのなら、できるだけ年金受給開始年齢は遅くしましょう。そして、健康を維持して、目いっぱい長生きする。高齢になっても健康でお得な年金が貰えれば充実した老後になりそうです。
もし、受給繰り下げをしたあとに資金が足りなくなった場合は、年金総額は増えませんが70歳までに受け取りの手続きをしたら、65歳から受給開始した場合に受給できたはずの年金総額をまとめて受給することができます。
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