ウィークリーレポート・マンスリーレポート
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100年に一度の危機といわれたリーマンショックを通して、強欲の度が過ぎた資本主義はその勇み足をとがめられる事態に直面している。
効率性と経済合理性が最善であるという資本主義の錦の御旗は、人間社会の公益の最大化が最善であり、効率性と経済合理性はそれに隷属する価値観であるという民主主義陣営からの反論に旗色が悪くなる傾向が進みそうだ。
これまでは世界が同じような価値観を共有するグローバリゼーションは良い事であり、自国、自民族などのやり方や道具を捨てて世界基準に合わせようという動きが続いてきた。世界基準という一個のルールに適合すれば事足りるなら、少品種大量生産が可能になり、生産コストは低下し企業の利潤は増加する。
しかし、元来人間社会は多種多様であり、一個のモノサシや一つのルールで律することは極めて困難なものである。
グローバリゼーションがトーンダウンし、地域や民族で分断されたグループが要求する様々な基準や仕様に多くの企業が対応する傾向が続くならば、資本主義陣営は長期間にわたってコストアップと格闘することになる。
この動きは、過去35年間にわたって続いてきた流れ(金利の低下、企業利益の大幅な増加など、参照:第15回)が逆転することを意味する。
それは長期的な株価の上昇率を低下させる可能性がある。(下図は2009年1月以降の先進国株式指数(MSCIワールド・インデックス)黄色の上昇角度が紫色の角度に低下)
ただ、コスト増加要因でビジネスの利益率が低下すると経営姿勢は慎重になるし、魅力が低下したビジネスへのライバル企業の参入も穏やかになる。その結果、業界全体からの資金需要はマイルドになり、金利の上昇は抑えられるだろう。
分断された市場が悪いわけではない。現在のようなグローバル化が進展する以前の1970年代や1980年代が不幸な時代であったとは判定できないからだ。
どのような環境になっても、ビジネスは人々の需要に対応した魅力的な商品やサービスを提供するだろうし、そのような企業は成長と拡大を続けるだろう。
ビジネスとは、あくまでも人間社会に従属する生き物であるから、時代や人間社会が変われば企業も変化していく。
変化を継続できる企業が生き延びて繁栄することは、古今東西の普遍の法則だろう。
今回のまとめ
資本主義は民主主義の要求するコストアップと格闘する時代が続くだろう。
ビジネスとは、あくまでも人間社会に従属する生き物だから、時代や人間社会が変われば企業も変化する。変化を継続できる企業が生き延び、繁栄する。
連載の終わりに
41回にわたった連載をお読みいただき、心から感謝申し上げます。来週から新たな連載を開始します。
お金が存在しなかった大昔
お金を持ち歩くようになった時代
様々な支払決済手段が乱立する現代
どんな時でも人類は、交換・売買など様々な経済行為(=ビジネス)を行ってきた
ビジネスが始まった瞬間から、それに付随する多種多様なリスク、困難、面倒に直面することになった
そして人類は、様々な努力を重ねて、それらを必要最低限に抑える創意工夫をしてきた
その努力の積み重ねが、現代のお金のシステムに結実しているのだ
この新連載では、お金に関するリスク、困難、面倒とそれを改善する創意工夫に関して、人類の歴史を振り返りながら、現在と未来のお金の姿を考えてみたい。
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