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中世の欧州において手形は、商業の発展に伴って使用頻度が増したことは前回話した。
小国が割拠していた中世の欧州だが、国境は現代と比べて明確なものではなかった。
なぜなら王様の領地が欧州内のあちこちに飛び地的に存在しており、地続きでは無い場合が多かったからだ。
そして多くの王侯貴族は政略結婚でお互いに姻戚関係を築いており、国境とは言っても現代の「国家と国境」
という位置づけとは随分と異なる状況だったのだ。
そんな欧州でも徐々に国を跨いだ他国との交易が盛んになっていった。
欧州での商業活動の特徴は、今では世界中で行われている見本市という制度の発達だった。
個々の商人が個別の産地を巡回して買い付けを行うよりも、売り手と買い手が一堂に会する見本市方式は効率的だった。
中世の欧州は現在のドイツ、フランス、イタリアが商業の中心で、そこに国際的な商人達が集まり、
見本市での大規模な売買が行われた。見本市は、当時の欧州人にとっては事実上の世界規模の市場だった。
特にフランス国王は商業を保護・育成し、欧州各地に点在していた見本市をリヨンに誘致した。その結果、リヨンは巨大な国際見本市の開催都市として栄えた。
金融は、最初は商業のサポート役だったが、徐々に力を増して商業よりも強大な存在となり、国際規模で存在感を発揮するようになった。
世界規模で経済活動の基盤となる決済システムを構築し独占し始めたのだ。
金融財閥は欧州各国に銀行の支店を持ち、各国通貨の両替、国際手形の取り扱い、
商人の仕入れや売却に付随する資金の融資などで巨万の富を築いた。こうして、現代まで続く金融の発展が始まった。
当時の銀行は今日のITプラットフォームと呼ばれる最先端の企業と同じような立ち位置だったのだ。
そのさなか、手形の利用は中世のイタリアで発達したが、紙に文字を書いたお金「紙幣」は手形のはるか昔に、、、
それは次回のお話
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