ウィークリーレポート・マンスリーレポート
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貨幣の発行に関しては17世紀以降多くの論争があった。物々交換時には無かった貨幣を得て人類の経済活動は飛躍的に拡大した。
同時に経済の好不調の変動幅も大きくなった。貨幣は経済取引で使われるものだから、経済が変動すれば取引の量が変動するので、付随的に使われる貨幣の必要量も変動する。経済変動に対応して貨幣の量を適正にコントロールするには何をどうすべきか、論争は続いたが決着はつかなかった。
前回述べたように、ナポレオン戦争(1799年~1815年)時の好景気時に英国は不換紙幣を大量に発行して取引の増加に伴う貨幣需要の増大に対応した。
戦争景気で生産資源に対する需要が大幅に増大したために、諸物価が上昇し、金の価格も上昇した。
金価格に連動する兌換紙幣の価値は上昇した。しかし、不換紙幣は金と交換できないので兌換紙幣よりも実質的に価値が下がってしまった。この状況で1797年に兌換紙幣と金の交換を停止した緊急措置を廃止して元の状態(=金と兌換紙幣の交換)へ復帰するには難題があった。
実質的に価値の差がついている兌換紙幣と不換紙幣の価値に正式に価値の差を設けることや不換紙幣を無効にすることは経済理論的には可能だが、社会不安や暴動を招くので政治的には実行不可能だった。
貨幣の量のコントロールに関する論争が再燃した。
貨幣の価値は交換可能な商品やサービスを仲介する価値の尺度であるので、適正な量のコントロールが必要だが、いかなる人物や団体も必要な通貨量を認識し、適宜発行、回収することは難しかった。
この時英国の地金委員会(金地金の高値の原因を調査し、通貨およびイギリスと外国の為替の流通および取引の状況を調査するためにつくられた特別委員会)は考えた。人間が経済を完全に管理することは不可能である。だから、永遠の輝きと世界がその価値を認める「金こそが貨幣の量を決める」=「経済を管理する」ことが正しいのだ。それが、戦費を賄うために不換紙幣を増刷して、インフレと通貨の下落を発生させるという悪循環から逃れる唯一の方法だ。
つまり、人間による管理よりも、金による管理が好ましい(=金本位制は万能の神)と考えたのだ。そして英国の地金委員会は1810年に金本位制を採用すべしと結論付けた。そう信じるしかなかったのだ。
しかし、ベキ論である金本位制の採用を現実に採用するには大きなハードルがあった。ナポレオンがエルバ島から脱出しフランス皇帝に復帰する前であり戦争経済体制が終結していなかったのだ、、、
それは次回の話
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