ウィークリーレポート・マンスリーレポート
印刷する場合はこちらをご利用ください。▶ PDF版を表示
ツケ、信用、お金、これらは「将来、商品サービスを入手する(=交換する)対価として使用できる権利」である。換言すれば、購買力だ。購買力が拡大すれば、商品やサービスを入手しようとする人が増えるから、生産が拡大し、結果として経済が拡大する。購買力が減少すれば不景気になる。換金が容易な農作物が豊作になると農家の収入(=購買力)が増加するので、農業国では好景気になる。インドなどがその適例だが、2019年のインドは農業生産が不作であったために経済成長力が鈍化したと報道されたことは記憶に新しい。農作物も間接的に購買力なのだ。ただし、ツケ、信用、お金、これの購買力は持っているだけなら経済に影響を与えない。購買力という権利を行使して始めて経済にインパクトを与える。購買力を持っていても行使する人が減少傾向になれば不景気になる。「預金通帳に多額の数字が並んでいてもお金を使わない」という人が増えると不景気になるのだ。
量的緩和、QE、異次元緩和、これらは金融の緩和、お金の量を増やすことだ。
お金の量が増えれば、株や不動産といった資産価格が上昇するが、経済が本格的に好転するには金融緩和だけでは力不足だ。経済の本格好転には、増えたお金を民間が活用して景気を持続的に拡大させる民間部門の積極的なリスク・テイク行動が必要だ。お金を使う人が増えて、物やサービスの購入量が増加し、それに伴って人の雇用の増加、物の仕入れ量の増加、金を借りる量の増加が持続的に続いて、経済が拡大基調になるというプロセスが起こって欲しいのだ。
「政府が借金を増やして財政支出を増加させてもインフレにならないなら、国債を増やし続けてもOK」という論調が増えつつある。いわゆるMMTと呼ばれる経済理論だ。MMTでは、もっと国債を発行して、政府の財政出動の規模を増加させる。これは政府が持つ信用(購買力)を顕在化させることだ。政府部門の積極的なリスク・テイクとも言える。
これまでは、国債発行の多くの部分が国家予算の固定費(医療、福祉、過去に発行した国債の借り換え)に使われるので、景気浮揚政策に使える部分が少なかった。しかし、政府が民間に代わって、経済にインパクトを与える分野でどんどんお金を使いだせば、景気を持続的に好転させるモノやサービスにお金が流れ込み続け、景気とインフレにインパクトが出るだろう。民間が買おうが政府が買おうが、例えば建設機械を買うという行為は経済的には同じ効果を生むのだ。以前の中国で、公的部門(役人)が贈答賄賂で大量の物(高級品)やサービス(レストラン等)にお金を使っていて、景気が良かったというのと同じだ。MMTを実行する際のポイントは、インフレが起こり始めたら、政府の支出を低下させ民間にバトン・タッチするルールを誰が強制するか、ということだ。有権者は使い続けて欲しいと言う、政府のお買い物で潤っている企業からは、「まだ悪いインフレではない」という論調が出てくる。民主主義は、「困ることから目をそらす性癖をもつ」ということは歴史を振り返れば明らかだろう。しかし、2020年はそれを懸念する段階ではない。
さて、為替レートの決まり方には金利、物価、人口など、諸説があるが、、、
それは次回の話
※当資料は春山昇華氏の個人の見解であり、三井住友トラスト・アセットマネジメントの見解を示すものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
※当資料の内容は掲載時点における市場環境やこれに関する春山昇華氏の見解や予測を示すものであり、春山昇華氏および三井住友トラスト・アセットマネジメントがその正確性、完全性を保証するものではありません。