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株式って何だろう?
そのエッセンスを3行で書けばこうなります。
やってみなはれ!金は出したる、俺たちが
失敗したらお前の取り分は無いし、俺たちの出資金もパーや
でも、成功したら山分けや~♪
これが株式投資の心意気です。何故こういう仕組みになっているのか?まずは、その起源を探ってみましょう。近代的な株式の起源で有名なものを2つ紹介します。
まずは、アラビアの隊商、いわゆるキャラバンです。皆様ご存知のシルクロード、これは欧州と中国を結んで活躍した商人たちが利用したユーラシア大陸を東西に貫く交易路です。シルクロードを通って、絹、金、香辛料などが中国を中心とするアジア地域から欧州へと運ばれました。アジアとの交易の利益は莫大でした。特にアジアで産出される香辛料は、欧州では同重量の銀と交換されるほど高マージンの輸入品だったと伝えられています。
それらの商品を欧州へ届ける要所である中東(上図紫丸地域)で活躍したのがアジアと欧州の間に横たわる砂漠を超えて商品を運んだキャラバンです。
ラクダによるキャラバンは100頭近くで編成される大規模なものを含め、その実行のためには莫大な経費と安全確保のための武器と要員が必要でした。しかし、それを賄う資金は王様を除き単独では負担できず、複数人の商人による共同出資形式が主流でした。
盗賊団などの略奪・暴行などの危険から身を守るための対策や、商品に損害が発生した場合の処理方法等を含め、出資者と輸送を担当する人々は様々な事態を想定し事前に取り決めをしました。このように、キャラバンは複数の商人や輸送を営む者が共同出資し、契約を結ぶことによって組織運営されていたのです。
リスクはあるが成功すれば儲けは大きいのがキャラバン。多くの若い商人は富豪になる夢を心に描きながら少額出資したり、自らギャラバンに随行したりして経験を積みながらビジネス・スキルを磨いていきました。
次に、アラビアの隊商に続くのが欧州の貿易船です。いわゆる大航海時代です。欧州の商人は、キャラバンで大儲けしているアラビア商人を横目で見ながら、彼らが巨万の利益を独占しているシルクロード貿易を打破して、自分が儲けたいと願っていたのです。そこで、中東を通らずに直接アジアに行くルートを模索しました。
何か大きなこと、大儲けできる事をやりたい!そういう意欲を持った人は欧州にもたくさんいました。でも彼らの多くは“資金が無い”ので、王様やお金持ち豪族に「シルクロードを通らずに金銀や香辛料を持ち帰れば巨万の富が得られます」と話術巧みに持ちかけたのです。良い代表例が、コロンブスと、バスコダガマです。
コロンブスは通常と反対方向の西回りで直接インドへ行こうとして1492年にアメリカ大陸に遭遇しました。バスコダガマはアフリカの南端を回ってインドまで到達し、1498年にシルクロードを使わないアジアへの道を発見したのです。
道が分かれば競争が始まります。“無事に帰って来られたら巨万の富だ!”を夢見る強欲な人々が資金を出し合って船・船乗り・積み荷を調達し、船団を仕立ててアジアへ向かいました。アラビア商人と同様に、欧州の貿易船も海賊による略奪・暴行などの危険から身を守るための対策や、積み荷に損害が発生した場合の処理方法等を含め、出資者と船団輸送を担当する人々は様々な事態を想定して事前に取り決めをしました。欧州の貿易船も、複数の商人や船団輸送を営む者が共同出資して契約を結ぶことによって組織運営されていたのです。
大儲けができるアジア貿易ではポルトガルとスペインが先行(その後スペインはポルトガルを併合)しましたが、オランダが猛烈な追い上げを見せます。スペインとポルトガルが独占するアジア船団貿易の利益を奪取するために、オランダが国策として1602年に設立したのが東インド会社でした。ついに国家が船団貿易の音頭を取ったのです。
これまでは船団貿易が終われば契約終了となり儲けを山分けして解散していましたが、東インド会社では永続的な船団貿易を前提とした契約に進化したのです。そしてこの東インド会社は「複数人が出資して永続的な企業の発展と利益の増大を目指す」という世界初の株式会社となりました(紆余曲折の後に、1799年に会社は解散しています)。
アラビア商人、欧州の貿易船、東インド会社に共通するDNAは・・・・
やってみなはれ! 金は出したる
失敗したらお前の取り分は無いし、俺の出資金もパーや
でも、成功したら山分けや~♪
・・・・という共通した精神です。
この株式の持つDNAは、「ビジネスが好調か不調かは俺には無関係だ。期限が来たら、耳をそろえて必ず返せよな!」という、貸付の世界とは大きく異なるリスク・テイク・マインドなのです。
さて、こうやって始まった株式会社ですが、その基本構造はどうなっているのでしょうか、、、、
それは次回の話
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