ウィークリーレポート・マンスリーレポート
印刷する場合はこちらをご利用ください。▶ PDF版を表示
努力しなくても得られるパフォーマンスがあるのでしょうか?
あるとしたら、それは年複利で何%なのでしょうか?
下図は、1974年12月末を起点(=100)とする2020年11月末までの3つの指数、日本(日経平均株価)、中国(香港ハンセン指数)、米国(S&P500指数)の円ベース・パフォーマンスです。1ドル=300円からの激しいドル安円高があっても、香港ハンセン指数(100→3,393)、S&P500指数(100→1,830)は上昇しており、日経平均株価(100→689)も上昇しています。
この3つのインデックス(指数)のETFに毎月ベースで等金額(例:1万円ずつ)を投資し放置するのが、努力なしで得られる株式投資のパフォーマンスだと春山は考えています。努力しないのですから、そのパフォーマンスに高望みしてはいけません。
では、その高望みしないパフォーマンスを計算してみましょう。過去20年、30年、40年等といった通算パフォーマンスだと、起点と終点という2点ですべてが決まるので、現実の投資パフォーマンスの基準にするのは不適当です。なぜならば、投資は様々な人が思い立った時に自由に始めますので、いつ始めるかは人によって多種多様で異なるからです。
春山の考える投資に役立つパフォーマンスの計算は下図のようなものです。まず、毎月末に等金額を日・中・米に投資して10年間放置した場合の資産の増加を計算します。1個目が「1974年12月から10年間」、2個目が「1975年1月末から10年間」、3個目が「1975年2月末から10年間」、こうして続けると432個目が「2010年10月末~2020年11月末の10年間」になります。その432個の平均が、努力無しで得られる株式投資の10年間パフォーマンスとなります。
1個目の「1974年12月から10年間」のパフォーマンスを計算(日・中・米の合算)すると、投資した株の元本部分だけで資産が2.91倍で年複利は11.29%となります。さらに現在(2020年11月30日時点)の配当利回りをチェックすると、日経平均株価(1.59%)、香港ハンセン指数(2.88%)、S&P500指数(1.66%)で、平均すれば2.04%となりますので、この配当分(約2%超)を加えれば、年複利13.29%のリターンになります。
この計算を432個やって集計すると、日・中・米に等金額投資した10年間のパフォーマンス平均は、「指数6.81%+配当約2%超=年複利8.81%超」です。つまり、努力せずに得られるリターンとは、控えめに見ても年率8%(複利)なのです。努力してアクティブ投資をする、または手数料を払ってプロが運用する投資信託を買うなら、当然「努力なしの8%」を上回ることが必要でしょう。
この「努力なしの8%」は平均値ですが、一体どんな変化をしているのでしょうか?計算された432回のリターンの推移(下図では資産100が10年間でどこまで増加するかを計算:配当除き)を見てみましょう。2倍以上になる場合が多いですが、元本割れも44回(10.2%の確率)生じています。
次に、リターン(資産100が10年間でどこまで増加するかを計算:配当除き)の分布を見てみましょう。下図を見ると、長期間継続すれば配当除きの資産は平均で約2倍になりますが、10回に1回程度は元本割れを起こすこともわかります。リスクがあるから高いリターンを得られるという株式投資の本質がしっかりと見られます。
ここで、マイナスになった時を調べると、1998年10月から2002年5月に開始したケースで、下図の株式市場チャートのシャドウ部分になります。ITバブルの最中に投資を始めて、リーマンショック後の低迷期に終わるという10年間がマイナスを記録しています。この先ITバブルも再来するかもしれませんし、100年に1度の大事件と言われたリーマンショックのような事件も今後100年以内のどこかで起こる可能性があります。ただし、バブルの時に始める投資は注意を要するということは頭に入れておいた方が良いでしょう。
数多くのチャートを見ていただき、努力なしで平均8%のリターンが得られることがお分かりいただけたと思います。なお、8%は平均です。5年、10年と継続してこそ、この比較的高い8%のリターンが得られるのであり、これが長期投資の王道だと春山は考えています。
投資家を初心者、中級者、上級者と分類することが多いのですが、この3者の差は何だろう?、、、、、、
それは次回の話
※当資料は春山昇華氏の個人の見解であり、三井住友トラスト・アセットマネジメントの見解を示すものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
※当資料の内容は掲載時点における市場環境やこれに関する春山昇華氏の見解や予測を示すものであり、春山昇華氏および三井住友トラスト・アセットマネジメントがその正確性、完全性を保証するものではありません。
※当資料では事例として特定の企業や銘柄に触れる場合がありますが、特定の有価証券への投資を推奨するものではなく、また当社ファンドが当該有価証券に投資することを保証するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。