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その株を買った理由は何ですか?
春山がそう質問すると「記事やニュースを見て面白そうだな、何となく株価も上がると思ったので・・・」という漠然とした理由が多いです。
投資をする人は「どれを買おうか?」と常日頃からアレコレ思案ながら過ごしています。ニュース、TV、雑誌、ネットなどの情報に接して「この会社、面白そうだ!」と感じた時に、「株式市場というものは長期的には上がるものだ。今見つけたこの銘柄もそうだろう」という気持ちになります。そして、「面白そうだし、株価も上がるだろう」という気持ちに素直に行動して、スマホでチャートを見て注文画面からクリック一発で買ってしまいます。しかし、このような「何となく買いました」という投資行動は無駄に墓穴を掘る投資になる確率が高いのです。
発注する前に以下のことを考えてほしいのです。
1:どこが面白いのか?(翌日には大した事ではないと思うかも)
2:それが儲かるのか?(面白いと儲かるは別次元です)
3:株価が好調だからそう思った?(明日下がると熱が冷めるのでは?)
4:条件反射で買いますか?(あなたの条件反射の勝率は高いですか?)
上記のようなことを3分間でも良いので行動する前に考える癖をつければ、何となく買う行動が減ると思います。
春山の過去40年間の観察では、初心者の条件反射的な投資の成功確率は50%以下だと認識していますので、何となく買うことをやめるだけで年間の投資パフォーマンスは改善します。
春山も「これは面白そうだ」と思う銘柄に数多く遭遇しますが、その銘柄を知ってから実際に資金を投ずるまでには、下図に示したようなプロセス(=下図a、b、c )を経て投資をしています。
平均して常時15銘柄ほどを投資候補として下記プロセスに従って継続観察調査しています。利益が出た銘柄の多くは、投資までに約6カ月の時間を要しています。のんびりとしたペースでプロセスを進めているためか、面白いと感じても最終的に実際の投資に至る割合は20社に1社(=確率5%)程度です。多くの「あっ、これ面白い」という候補銘柄は投資に至らずに脱落しているのです。
この期間や確率は投資家によって異なるので春山のケースがベストとは言えませんが、「考える癖をつけることが失敗を減らす」ことは確かだと思います。
何をどう考えるのでしょうか?
春山の場合は下図に記載した4項目をチェックしています。
1:このビジネスは儲かるのか?
2:この会社が、このビジネスの最大の受益者なのか?
3:今の株価で投資するのが良いのか?
これら3点は基本チェック項目です。このテストに一発で合格すれば、その後に購入の発注をしますが、「面白いと思った銘柄の株価は上がり続けている」場合が大多数なので、投資候補として継続観察することになります。
つまり・・・4:投資タイミングを待つ・・・というチェックフェイズになるのです。
4つのチェック・ポイントをもう少し詳細に説明すれば・・・・
1:このビジネスは儲かるのか?
面白いことが儲かるとは限りません。社会に役立つことが企業経営として長期間維持できるとは限りません。
従業員の給料を支払い、出資者(=株主)に配当を支払い、銀行ローンの返済を着実に履行する、このような事を長期間持続しながら企業を成長させていくことがビジネスです。
儲からなくても良い、短期間で良い、嫌になったら面倒くさくなったらやめれば良い、そういう趣味の世界とビジネスは別世界です。まずは、長期
間のビジネスとして成立するのかを考えることが最も重要だと思います。
また、似たようなビジネスは既に誰かが実施している可能性があります。その場合、既存の類似企業と何が異なるのか、単なる二番煎じを少々安く売るだけではないのか、を考える必要があります。
さらには、過去にも類似のビジネスあり、失敗したビジネスの復活であるケースもありますが、その場合は過去の失敗事例と何が異なるのか、今回は失敗しない理由があるのか、をチェックしなければなりません。
2:この会社が、このビジネスの最大の受益者なのか?
同じビジネスをやっている同業他社が複数存在する場合は、面白いと思った企業がこのビジネスの最大受益者なのか、ライバルの方が儲けているのではないかをチェックすることが必要です。最も儲けている企業に投資するのが鉄則です。
また参入障壁が無いビジネスの場合は、簡単にマネされてライバル増加で利益が急低下する可能性があるので、その辺も考えなければなりません。
3:今の株価で投資するのが良いのか?
TV、新聞、ネットの情報を見て面白いと感じることが多いのですが、メディアが取り上げる銘柄は株価が堅調に上昇している銘柄がほとんどです。そうでなければ読者が興味を持たないからです。しかも複数のメディアが時間を置いて順次掲載することが多いので、自分がその情報に接したときは既に多くの投資家は知っていて株を保有している状態かもしれません。
つまり、面白いと考えて株を購入する投資家が徐々に増えてきており、株価も相当に高くなった時に、あなたがメディアの情報を見て「面白い、買いたい」と思った可能性があります。面白いと思っても、株価の適正レンジはどのあたりだろう?と考えて納得してから投資したほうが失敗をする回数が減ります。適正価格の考え方は非常に長い説明になるので、別の回で解説したいと思います。
無理して個別株を高値で購入する必要はありません。「第4回:努力なしで得られるパフォーマンスは何%ですか?」で説明したようにETFで8%のリターンは確保できますし、「第7回:個人投資家に適したポートフォリオ」でお示ししたように個別銘柄はポートフォリオにゆっくりと組み込めばよいのですから、焦る必要は全くないのです。
4:投資タイミングを待つ
もし適正レンジよりも高い場合、もしくは適正レンジの上限に近い場合は、その場で投資するよりも少し待った方が安全な投資ができることが多いです。
この待つ時間に追加の情報が得られますし、それを考慮することで自分の判断の妥当性を検証することができ、妥当な株価が訪れた際には自信をもって投資ができるようになるのです。
投資では最初の一歩が最も大切です。
「投資タイミングを待つ」とは、最も重要な投資行動を熟慮して実行することです。
世界的に有名な投資の名人「本間宗久」も著書の最初に述べています。
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米商いは踏み出し大切なり
踏み出し悪しき時は決して手違いになるなり
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最初の第一歩は最も重要、それを間違えると損をすることが多い、という意味です。
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又商いを急ぐべからず
急ぐときは“踏み出し悪しき”と同じ
“売買共、今日より外、商い場なし”と進みたち候時、さらに三日待つべし
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この心は、「頭を冷やして冷静になれ!」ということです。
三日という数字は各人によって異なるでしょう。春山の場合は「ここが天井/底と思ってから、1週間後がそれであることが多い」という判断の癖があります。なので、その分だけ我慢して行動するようにしています。
本日記載したことは個別銘柄に投資する場合にチェックする共通項目です。株には複数のグループがあり、それぞれの株価の動きは異なります。それは価格形成要因がグループごとに異なるからです。それに関しては、この連載を通して複数回で説明する予定です。なお春山の実際のプロセスの様子や実例に関しては別の回で紹介したいと思います。
投資判断に何を使いますか、ファンダメンタルズ? チャート?
それは次回の話
※当資料は春山昇華氏の個人の見解であり、三井住友トラスト・アセットマネジメントの見解を示すものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
※当資料の内容は掲載時点における市場環境やこれに関する春山昇華氏の見解や予測を示すものであり、春山昇華氏および三井住友トラスト・アセットマネジメントがその正確性、完全性を保証するものではありません。
※当資料では事例として特定の企業や銘柄に触れる場合がありますが、特定の有価証券への投資を推奨するものではなく、また当社ファンドが当該有価証券に投資することを保証するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。