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株価はどういう風に決まる(=価格形成メカニズム)のでしょうか?
春山はファンダメンタルズとチャートの相互作用だと思っています。「ファンダメンタルズに関する詳細解説&チャートに関する詳細解説」は重要な項目なので、複数回に分けて別途解説しますが、本日は「ファンダメンタルズとチャート」による株価の価格形成メカニズムのイントロダクション的な部分をお話ししたいと思います。
株価形成に関するファンダメンタルズとは、その企業の売り上げ・経費・利益の現在・過去・未来です。そして今日以降の株価に影響を与えるのは、未来予想図です。
チャートとは、ファンダメンタルズを考えながら「今日の株価なら、買いだ/売りだ」と投資家が判断、実行した事実の足跡です。
株価は大枠ではファンダメンタルズに沿った値段になります。沿った値段とは一定の値幅(レンジ、ゾーン)であり、ピンポイントではありません。
この一定の上限と下限の間の価格帯のことをフェア・バリュー・レンジとか適正レンジと呼ばれています。
自分自身で数多くの分析をして「この株価が妥当だ」と強く思っても株価を決めることはできません。自分以外の大勢の投資家の売買行動が株価を決めます。自分自身は「その他大勢が決めた株価を受け入れる」しかありません。
適正レンジは徐々に変化します。変化が起こる要因は「未来のファンダメンタルズ」です。未来が現在よりも明るければ適正レンジは上昇しますが、未来が現在よりも暗ければ適正レンジは下がって行きます。その結果、適正レンジは真横の平行線だけではなく、右肩上がりの平行線や右肩下がりの平行線にもなります。
より正確に言えば・・・
現時点で投資家の「コンセンサスになっている未来」が、明るい方向に変化すれば、適正レンジは上昇します。
一方、現時点で投資家の「コンセンサスになっている未来」が、暗い方向に変化すれば、適正レンジは下落します。
・・・という記述が妥当ですが、この辺は後日詳細に解説します。
株価は未来のファンダメンタルズによって決まるのですが、それは様々な数式で表現されます。
代表的なものが下図(株価=EPS×PER)です。良く見る数式ですが、実際の投資にどう役立てれば良いのかわからない投資家が多いのが実情です。今日は、その総論的な部分を話したいと思います。
第一に、世界中の投資家全員に共通の真実は株価だけです。株価はスマホさえあれば誰でもいつでも無料で見られます。世界中の投資家に同じ数値が示されます。
第二に、EPSとは、未来の利益予想(一株当たりの利益金額)ですが、予想なので人によってバラバラです。自分の予想、友人の予想、A証券会社の予想、会社が発表する予想、このように多くの予想利益が存在しています。
自分で予想をしない個人投資家の場合は、投資判断に際しては予想利益の平均値(=コンセンサスと呼ばれます)を使うことになりますが、コンセンサスを集計する会社も複数(QUICK、FISCO、Bloomberg等)あります。集計する会社ごとに、集計母体(=集計対象範囲と集計人数)はバラバラです。どの会社が集計したコンセンサスを使うのがベストなのは一概には言えませんが、個人的には長期間継続して参照できるという点ではFISCO集計のコンセンサスEPSが良いと思います。
第三に、PERとは唯一の真実である株価を、人によってバラバラな予想EPSで割り算した結果として後から出てくる数字にすぎません。ですから、どの予想EPSを使うかによって、算出されるPERは異なるのです。
投資判断をするに際して重要なことは、同じコンセンサスを使い続けることです。同じデータを使い続けることによって、その変化を察知し、その変化の意味を考えることができます。
過去の株価・予想EPS・PERを観察すれば、その銘柄がそういうPERのレンジで動いてきたのか、どういう経済&業績局面ではPERがどういう動きをしたのかを知ることができます。
それが認識できれば、現在の予想利益をベースに、妥当な株価レンジを知ることができます。
シンプルな形にして説明すれば(下図参照) ・・・・ある銘柄の過去の株価・業績・PERを調べれば、「12倍~17.4倍」であったことがわかります。
この銘柄のPERレンジが「12倍~17.4倍」だとわかれば、今日の予想業績(下図の場合:140円)をベースに、今日の妥当な株価レンジは「1,680円~2,436円」だとわかります。
そして、実際の今日の株価と株価レンジ「1,680円~2,436円」を比較して、今の株価が妥当レンジの中で高い方なのか安い方なのかを判断できます。
現実の投資判断においては、この銘柄が過去のどういう経済、業績局面でどんなPERであったのかを参考に、妥当な株価レンジをさらに絞り込むことになりますが、その作業は別の回に解説することにします。
チャートは役に立つのでしょうか?
チャートは投資家が判断、実行した事実の足跡としての推移です。チャートは事実に立脚しており、未来のファンダメンタルズは投資家ごとにバラバラな推定値であり「ファンダメンタルズVSチャート」は、「推定値 VS 事実」と言い換えることが出来そうです。
春山が思うには、ファンダメンタルズだけで投資判断すると「思い込みに引きずり込まれる」傾向になります。自分の推定が正しいと信じたいがあまり、周りが見えなくなり、自分の思い描く世界にしがみついて含み損を抱えた銘柄を売るに売れなくなります。
一方、チャートだけで投資判断すると、「節操がなくなります」。ファンダメンタルズを考えずに現在のトレンドを単純に伸ばしてしまいます。どこまでも上がる、どこまでも下がる、と考えてしまう傾向になります。
春山は、ファンダメンタルズ分析とチャート分析の両方を併用することで、両者の欠点を抑えて良い所取りができると考えており、併用を実践しています。
春山の経験では、未来ファンダメンタルズによって想定されるフェアな株価とチャート分析の示す未来株価が、似たような数値を示す場合は、予想が当たる確率が高いという経験則があります。
チャートのパターン認識とその解釈は投資判断をする際の重要なツールです。今後の連載で数回に分けて説明する予定ですが、今日は総論的な部分だけ触れておきます。
1:投資タイミングの判定では、ファンダメンタルズ分析よりもチャート分析の方が有効です。安値で購入できても、長期間その株価が上昇しなければ、その間は投資した資金は死に金になります。チャートを使う事によって、売買タイミングの判断が改善して、期間あたりのリターンが向上します。
2:チャートは万能ではありません。当てはまらない場合も多々ありますので、その場合はその銘柄への投資はやめておいて、チャートが当てはまる銘柄に投資しましょう。我々個人投資家の目の前には世界中の投資候補があるのですから、特定の銘柄に固執する必要はありません。
ファンダメンタルズにせよ、チャートにせよ、過去の様々なデータをビッグ・データ的に活用して未来を考える、それが株式投資です。
つまり株式投資のエッセンスは温故知新なのです。
さて、そもそも何故投資家は株を保有したいと思うのでしょうか? ・・・
それは次回の話
※次回掲載は、3月24日の予定です。
※当資料は春山昇華氏の個人の見解であり、三井住友トラスト・アセットマネジメントの見解を示すものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
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