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「老後2,000万円問題」をきっかけに、50代の方の家計相談が増えています。定年が目前に迫った50代のサラリーマン家庭の家計相談では、定年時の退職金について伺っています。ご夫婦で共働きであれば、ご主人の分も、奥様の分もそれぞれ伺います。
当然に把握していそうなことなのですが、「退職金があるのか、ないのかわからない」「退職金がいくらくらい見込めるのかわからない」とおっしゃる方が意外と多く、驚かされます。
退職金には一度にまとめた金額を受け取る「退職一時金」と、分割して受け取る「退職年金」があり、これらを併用できる場合もあります。
平成30(2018)年の「就労条件総合調査結果の概況」によると、勤続年数35年以上の定年退職者で、退職一時金制度と退職年金制度を併用できるケースの場合、平均退職給付額は大卒・大学院卒(管理・事務・技術職)は2,493万円、高卒(管理・事務・技術職)は2,474万円、高卒(現業職)は1,962万円です。
この退職金給付制度の支給実績は、1,000人を超える大きな企業では92%を超え、30人~100人未満の企業では78%弱に減っており、大企業のほうが退職給付制度の導入率が高いといえます。ですが、日本の会社全体でみると80.5%の企業で支給実績があります。
東京都の中小企業に焦点を当ててみてます。平成30(2018)年「中小企業の賃金・退職金事情(東京都産業労働局)」によると、中小企業の退職一時金と退職年金制度を併用できる定年退職者のモデル退職金は大卒1,690万円、高卒1,502万円となります。モデル退職金は、学校を卒業してすぐに入社した人が普通の能力と成績で勤務した場合にどの程度の退職金が支給されるかを算出しています。
こういったデータから退職金の目安を持つことができますが、働いている会社により給付の有無や給付の水準が異なります。
では、あなたが働いている会社はいくら退職金が出る見込みでしょうか。
退職金は労働による賃金や年金と同様、老後資金の大きな柱の一つになります。おおよその退職金額を知らなければ、老後の生活設計も十分にはできないでしょう。何も準備しなくても国が何とかしてくれるだろうと考えていると、ゆとりのある充実したセカンドライフを過ごすことは難しくなるかもしれません。
自分の会社にはどういった制度があるのか、自分がどれくらいの退職金がもらえるのか。それを知っていると、今後の資産形成や定年後の働き方を考えやすくなります。是非確認してみてください。
退職一時金で一括返済をしようと思って住宅ローンを組んでいる人は要注意です。住宅ローンを退職一時金で一括返済した結果、「貯蓄額だけではゆとりのある生活が送れなくなった」、という人に何人にも会っています。収入を増やすことが若いころと比べ難しい年代ですから、老後資金の不足は死活問題につながりかねません。
住宅ローンを一括返済するといくら残るのか、残りの金額で老後生活を維持することはできるのか、ゆとりある生活を送ることができるのか、きちんと見込んでおき、必要があれば早めの対策を行っておくことが重要です。
退職金がないとわかっている方の中には、コツコツ貯金をしてきた人もいるはずです。一方で、子育てにお金がかかり、貯畜が上手くできなかったという人もいるでしょう。貯蓄ができていないといっても、あきらめるのはまだ早いです。まずは自分の貯畜目標を立て、状況を変えようとすることが第一歩です。
50歳から65歳までの15年間、毎月3万円の積み立てを行ったとすると元本だけでも540万円の貯蓄ができます。また、就労を延長し70歳まで同条件で積み立てるとすると、元本だけで720万円の資産形成が可能です。積立投資を行い、仮に年率3%で運用が行えた場合、15年間で約686万円、20年間では約990万円と、さらに上積みをすることも期待できます。
まずは実行あるのみです。
※上記はシミュレーションであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
※また、購入時における手数料、税金等の諸費用は含まれておりません。
スタートが遅くても、どう積み立てていくのかの対策を取りながら、一方で長く働けるようにしていくと、老後資金の不足を少しずつカバーできるようになるはずです。
実際に、50歳になってからiDeCoを始めた人や60歳目前でつみたてNISAを始めた人もいます。これらの制度は長寿化に対応できるように、今後も改善されていくことが期待されます。
※当資料は横山光昭氏の個人の見解であり、三井住友トラスト・アセットマネジメントの見解を示すものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
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