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人生100年時代、年金だけでは老後を暮らしていけないなどとよくいわれています。老後資金については以前より3,000万円とか6,000万円必要だなどといわれてきましたが、いわゆる「老後2,000万円問題」をきっかけに、「準備しておかなくてはいけない」と今まで以上に意識される人が増えていると感じます。そして今までお金に無頓着というか、のんびり構えてきた人の中には、定年直前に豊かな老後生活を送るには資金が不足していることに気が付き、焦ってしまうこともあります。
ですが、繰り返しますが今は人生100年時代。60歳ごろに気が付いたのなら、まだ用意できるだけの時間があります。
老後資金を今からでも何とか準備できないだろうかとご相談に来られたTさん(60歳)も、老後資金が不足しているのではないかと心配していました。現在は再雇用で仕事を続けており、妻(57歳)は会社員で働いていましたが、今は病気のため自宅で療養中です。3人いるお子さんは、全員独立しています。
Tさんが60歳になった時に受け取った退職金と今までの貯金を合わせると、老後資金は2,800万円。妻も働いているし、自分の収入と合わせればこれからも貯められるだろうし、老後は何とかしていけるだろうと考えていました。しかし、直後に妻が病気になり、退職。収入がTさんの収入だけとなり、予定が崩れてしまいました。
現在の収入は、Tさんの手取り収入が約20万円ほどのみ。65歳になると退職しますが、Tさんの年金が17.2万円、妻の年金が7.8万円ほど見込めています。対して毎月の生活支出は約30万円。住宅ローンは完済済みです。
大雑把に計算すると今のままだと65歳までの間は毎月10万円、総額600万円の生活費の補てんが必要で、2人で年金生活に入ると、月に5万円の補てんが必要です。あと30年間ご夫婦で生きると考えると、5万円×12カ月×30年で1,800万円と合わせて2,400万円が老後の生活費として必要です。それ以外に固定資産税などの年払いで必要なお金、イレギュラー費、その他医療費や介護費、住宅の補修費などを考えるとさらに年間30万、およそ1,000万円は準備しておいた方がよいでしょう。そうなると、現状で最低限必要なTさんご夫婦の老後資金は3,400万円。あと600万円ほど今の老後資金を増やしておかないと足りない計算です。
単純な計算なので人生の中では多少金額が変わるというところもあるでしょうが、そのくらいあったほうが安心ということなのです。
現状から少しでも老後資金を長持ちさせられる状況を作るには、まず、Tさんご夫婦の生活費の削減を図ることが大切です。医療・療養費や衣食住など基本的生活費は優先的に支払うべきものです。他に生きがいとなるような趣味費や何か大切にしていることには優先して支出します。その分、それほど重要ではない支出を減らしていきます。このようにして、支出にメリハリをつけ、生活を楽しみながら支出を削減することに取り組みます。
老後資金の2,800万円の一部から少しずつ積立投資をすることを検討してみましょう。小分けにに積み立てていくと時間分散ができますし、資産の目減りを防ぐことにもなります。
一度に多額を投資に回すのではなく、生活費に使わない金額を1カ月ごとなど、定期的に、投資していきましょう。1万円程度の少額からはじめ、少し余裕ができたり、投資に慣れて多く積み立てたいと思えるようになれば、金額を増やしていけばよいのです。
60歳といっても、人生100年と考えると、まだ40年あります。平均寿命などで考えても、男性81歳、女性87歳(厚生労働省「2018年簡易生命表」)ですから、健康に大きな不安がなければ、20年ほど運用を考えることは自然な話です。つみたてNISAなど非課税制度の積立投資を活用してもよいでしょう。
生活の仕方やお金の使い方を変えるのは、ペースをつかむまでは大変です。働いて収入があるうちにしっかり自分のペースを作り、老後長く蓄えが持つような暮らし方をしてほしいと思います。
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