ウィークリーレポート・マンスリーレポート
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老後の暮らし方の一つに、田舎や海外などに移住するという方がいます。それ自体は悪いことではないのですが、時々見通しが甘く「こんなはずではなかった」となる人もいます。環境の変化を計画するのであれば、行動に移す前に、どのような暮らし方になるのか、見通しを立てておくことが大切です。
会社員のKさん(58)も、60才で定年後は実家で野菜をつくりながら暮らしたいと考えている一人です。それを不安に思う妻(58)に連れられ、移住してもやっていけるかどうかご相談に来られました。Kさんは、子どもの頃のように自分の畑で育てた野菜を食べたり、それを近所の人に分けたり貰ったりする暮らし方ができれば収入が少なくてもやっていけるだろうと安易に考えているようなのです。
というのも、Kさんの年金受給予定額は65才から月額17万円ほど。健康保険料などが引かれると、手取りで月額15万円残るかどうかです。ずっと専業主婦だった妻の年金は月額5万円弱出る見込みですが、2人で手取り月額20万円に届かない収入では、例え住宅ローン返済がない状況で都会で暮らし続けたとしてもやり繰りの苦しいことが予想できました。もっとも妻は、その移住計画に伴う環境の変化も不安ですし、第一本当に家計のやり繰りができるかが不安です。夫一人が田舎へ行き、自分は都会に残るなども考えましたが、生活費が二重にかかることも負担だと思い、ついていくことを考えはじめています。
田舎暮らしは都会暮らしよりも住居費をはじめとする生活費が減ることが見込まれます。そして自給自足の生活ができれば、食費も節約することが期待できます 。このようなことから、定年後は田舎で農業をして暮らしたいと考える人がある程度いるのです。ただ、 周囲になじめるか、長期継続が現実的かを考え思いとどまる人も多いものです。それでも田舎で暮らしたいと思うのなら、ご自宅を売却して田舎暮らしの初動費用に当てることで資金に余裕ができれば可能性が高まるかもしれません。
実現が可能かどうかを判断するには、先を見据えなくてはいけません。収入の見込みと貯金額等を計算し、収支状況を試算してみましょう。Kさんの老後資金は、退職金をもらうと約2,500万円になります。定年後すぐに移住すると、年金受給までは貯蓄から切り崩して暮らしていくことになるでしょう。収入のない期間を作らないためには、65歳まで再雇用などで働き、年金を貰うころに移住するという選択肢も考えられます。
移住して食費や日用品代をはじめとする生活費が、貰う年金額の中で収まれば、生活の不安はぐんと減ります。移住する前で、やってみなければわからない部分かもしれませんが、夢を実現するために現実的に考えましょう。たとえ移住後すぐは上手くいかなくても、暮らせるだけの余裕資金を準備しておくなどの工夫が大切です。
環境の変化、近所づきあいなど今と暮らし方が変わることに覚悟をもって臨むのなら、上手くいくことも多いと思います。実際、私のところに来たお客様のなかに、地元にもどり農業をはじめたら、自分で作った農作物だけではなく、近所からもらう米や野菜などで食費がかからず、年金で生活も貯金もできたという人がいます。向き、不向きもあると思いますので、お金面だけではなく環境変化の視点も踏まえ、よく検討をしてみましょう。
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