ウィークリーレポート・マンスリーレポート
印刷する場合はこちらをご利用ください。▶ PDF版を表示
定年までに老後資金が十分に作れなかったので、これから老後資金を作りたいというご相談は、意外と多いものです。昔は子育てがひと段落したあと、定年までの期間を利用して老後資金を貯めるという流れが多かったのですが、最近は晩婚、晩産化により、定年を過ぎても教育費がかかり、老後資金をなかなか貯められないというご家庭も珍しくありません。
そのようなご家庭でも、老後の収入にゆとりがあれば、つみたて投資で80代、90代の生活のための資産形成に取り組むことは可能です。定年後の収入についてある程度把握し、どのように暮らし、どのように資産形成をしていくか計画を立ててみましょう。Nさん(65歳)は2年前まで継続雇用で働いていましたが、職場の人間関係が元で退職しました。退職時の貯金残高は約300万円。60歳の定年時に住宅ローンを完済したこと、子どもの教育費の負担が大きかったことで、これしか残っていませんでした。
それでも再雇用の間は月18万円ほどの手取り収入があり、61歳からは月に11万円ほどの特別支給の老齢厚生年金も受給しています。当時は現役だった妻(61歳、委託社員として就業中)の手取り収入も約14万円あり、世帯収入は約43万円程ありました。この時点で貯金を増やすことができればよかったのですが、現役時代の生活レベルを落とすことができず、何にでも支出が多め。結局、貯金が増えることはなく3年間を過ごしました。
Nさんの退職後は、世帯の手取り収入はNさんの年金と妻の収入の25万円ほどになりましたが、ここで老後資金を減らすわけにはいかないと、外食を控えたり、趣味やレジャーにかけていた資金を工夫するなどし、収入内での生活を心掛けながら、時々アルバイトをしてイレギュラーな支出分については補ってきました。年金受給までの2年間は、収支ギリギリの暮らし。Nさんが65歳になり基礎部分の年金受給が始まると、妻の特別支給の老齢厚生年金の受給も始まりました。Nさんの年金額は約17万円、 妻は約5万円です。そして妻は仕事を継続しているので、変わらず約14万円の収入もあります。世帯の手取り収入は36万円ほどです。
生活の仕方を収入が減った2年間と変えないようにできれば、以降4年間は家計から毎月10万円ほどの黒字が出ます。これを利用してこれからの老後資金を増やしていくことはできないかと、Nさんは考えたようです。妻が年金生活に入ると、妻分の年金額は約11万円になります。つまり夫婦で年金生活に入っても、収入は28万円ほどあることになります。今のまま生活費を抑えることができれば、生活自体には問題はありません。ですがNさんは、病気をした時や介護が必要になった時、またご夫婦で旅行など楽しみの時間を持ちたいとも思い、今より先の老後資金を、これから作りたいと考えているのです。
幸い、現在の老後資金は少ないですが、生活を維持する分の金額はあります。基本的に貯金は一時的に必要な資金の部分と、計画的に貯めて趣味やレジャーに使う部分とで、最低限、生活費の※7.5ヵ月分は準備したいもの。これに当てはめると、Nさんご夫婦は200万円ほどの貯金があれば最低限良いといえます。現在の貯金が300万円ですから、生活資金はあると判断して良いでしょう。
※7.5ヵ月分=「使うための貯金=月収1.5ヵ月分」と「おろさない貯金=月収6ヵ月分」
そうであれば、これから先のお金の貯め方は、投資をしていくことも視野に入ります。今は人生100年時代です。80歳、90歳、もしかすると100歳まで生きることもありえます。今の年齢からいうと、15年、25年、35年と、長い時間が残っているわけです。もちろん老後というステージに入っていますから、投資をやりたくないと思っていたり、ご自身の長生きに対する自信の度合いなどにより、やらないことを選択することも間違いではありません。ですが、逆に長生きを目標にはじめてみるということも、選択肢として十分にあるのです。
利益ばかりを狙うような投資ではなく、お金の目減りを防ぎ、ゆっくりと増やしていけるように、投資信託の積立などがおすすめです。中でも、運用益を非課税に投資できる「つみたてNISA」は、年間40万円まで、つまり月にすると3万3千円ほどの投資額になりますが、20年間非課税で運用できます。かつ、お金が必要な時にはいつでも引き出すことができるので、若い人の資産形成に向いていると言われていますが、老後に活用することにも向いています。
年金生活に入っても、家計状況によっては余剰金を生み出すことができます。今の60代はまだ若いです。先を見据え、長期投資も視野に入れ、無理のない投資を楽しんでいくことも良いでしょう。
※当資料は横山光昭氏の個人の見解であり、三井住友トラスト・アセットマネジメントの見解を示すものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
※当資料の内容は掲載時点における市場環境やこれに関する横山光昭氏の見解や予測を示すものであり、横山光昭氏および三井住友トラスト・アセットマネジメントがその正確性、完全性を保証するものではありません。
※当資料内の家計相談は、実際の家計相談を基に構成した創作です。