ウィークリーレポート・マンスリーレポート
印刷する場合はこちらをご利用ください。▶ PDF版を表示
ダイバーシティ(多様性)は人権平等を確保するための社会的課題であるとともに、企業が持続的な価値創造を実現するための重要な課題の一つです。企業にとってのダイバーシティには2つの側面があります。
企業が持続的に成長するためには、企業価値を損なう虞がある不適切な判断を抑止する守りの視点と、企業価値を高める適切なリスクテイク・正しい判断を促進する攻めの視点が重要です。思い込みや固定観念を排し、時代の変化や不測の事態に対応するには、さまざまな意見が反映されるガバナンスが求められます。
多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供する企業においては、活発なアイデアが事業に反映されイノベーションが創出されるだけでなく、優秀で多様な人材が集まる好循環が生まれます。多くの人材に活躍機会が与えられることで、将来の経営層を輩出すべき人材パイプラインとなる管理職プールも多様化、重層化され、長期的にはガバナンスの強化にも結び付きます。
ダイバーシティへの取り組みは、多くの場合インクルージョンの取り組みとセットで語られます。ダイバーシティは「多様性」、インクルージョンは「受容、包摂」を意味します。多様な価値観をもつさまざまな人材が集まる組織において(=ダイバーシティの確保)、個々の意見やアイデアをお互いに尊重し、認め合う(=インクルージョンの実現)ことで初めて創造的な組織となり、企業価値につながるのです。外形的に女性や外国人などの登用を進めることだけを目的とするのは本末転倒で、ダイバーシティの実効性を高めるためには、多様な価値観を受け容れる企業風土が必要であり、ダイバーシティ&インクルージョンを達成するためには、企業トップの強い意志と制度・施策面での取り組みが欠かせません。
役員や管理職といった意思決定層の構成に、企業にとっての重要なステークホルダーである社会や顧客などの構成が全く反映されていないということは、本来とても不自然な姿であり、より適切な決定を行う機会を逃すことも考えられることから、それ自体がすでに持続的な形ではないように思われます。ダイバーシティにはジェンダー(性別)、性的指向や性自認、人種や民族、世代、スキルや経験、文化など、さまざまな観点がありますが、とりわけジェンダー・ダイバーシティに関する取り組みは世界の人口の半数を占める女性が主な対象になることから、最も重要な課題の一つです。既に欧米のグローバル企業においては、社会的な公平性確保の観点に止まらず、事業戦略を実現するための女性登用がビジネスの大前提となりつつあります。旧態依然とした組織体制に安住し変化へのチャレンジが乏しい企業と、多様な意見を積極的に取り入れ経営に反映していく企業のどちらの持続可能性が高いといえるかは明白です。経営トップによるダイバーシティへの取り組み度合いは、まさに企業変革への本気度を示すバロメーターと言えるでしょう。
***************************************************************
※当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
※当資料は信頼できると判断した各種情報等に基づき作成していますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。
※当資料では事例として特定の企業や銘柄に触れる場合がありますが、特定の有価証券への投資を推奨するものではなく、また当社ファンドが当該有価証券に投資することを保証するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。