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「パーム油」と聞くと、「聞いたことがあるけど、実はよく分からない」と答える方が多いのではないかと思います。パーム油とは、西アフリカ原産の「アブラヤシ」の果実から得られる植物油であり、パンや菓子、マーガリン、インスタント麺などの食品、さらに洗剤や化粧品など多くの用途に使われるだけでなく、単位当たりの収穫量が他の植物油脂と比べて非常に多く安価な植物油であり、現在、世界で最も生産される植物油脂です。
一方、パーム油は、その生産過程において、森林伐採を起因とする気候変動問題だけでなく、サプライチェーンを通じ、環境・人権・労働問題等、様々な問題を抱えています。
このコラムレポートでは「パーム油の問題の現状」を整理、機関投資家としての当社の課題解決へ向けた取り組みをご紹介させて頂きます。
パーム油はどこでも生産できるものではなく、その原料となる「アブラヤシ」には十分な日照と高温多湿な気候が必要です。1960年代以降マレーシアで、1980年代にはインドネシアでプランテーションによる栽培が盛んになり、現在、世界において約55%がインドネシア、30%超がマレーシアで生産されています。汎用性があり、生産効率が高くかつ安価であること等を背景に世界のパーム油需要が急速に増加しましたが、その引き換えに、アブラヤシプランテーション開発にともなう熱帯雨林や生物多様性の大規模な消失、労働者の劣悪な環境や土地開発での地域住民との衝突など、様々な問題が発生しました。
パーム油生産の農園開発のための道路設置により破壊された熱帯雨林(マレーシア)
WWF(World Wide Fund for nature:世界約100ヵ国で活動している環境保全団体)が纏めた、パーム油がサプライチェーンで抱える問題点は以下の通りです。(WWFによる翻訳公表文より)
また、欧州連合(以下、EU)によるパーム油の輸入禁止方針の問題も指摘されています。EUは2018年に輸送用の燃料に混ぜるパーム油の輸入を2030年までに事実上禁止する方針を決めたのに続き、2019年にはパーム油の輸入を2030年までに全面的に禁止する方針を決定しました。この決定をめぐり、パーム油を主要な産業・輸出品とするマレーシアやインドネシアと対立することとなっています。EUと東南アジア諸国連合(以下、ASEAN)は持続可能な植物油の生産を目指す方針で一致はしていますが、対立は解消に至っていません。
次回は「パーム油問題に対する当社の取り組み」を掲載予定です。
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