ウィークリーレポート・マンスリーレポート
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1990年以降、パーム油はASEAN地域において主要な産業として成長しました。一方、サプライチェーンを通じ様々な問題を抱えており、その解決を図る一つの手段として2002年にNGOなどが中心となり、環境や人権に配慮した持続可能なパーム油生産について関係者が一体となって考える場として設立されたのが、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)です。当社は2016年からRSPOの会議への参加をしており(図表1)、その枠組みを通じてパーム油生産者や、そうした業者に資金を融通する金融機関向けのエンゲージメントなどを通じ、問題解決に向けた取り組みを推進しています。
RSPOのビジョン*1は、「持続可能なパーム油が標準となるよう市場を変革する」ことであり、持続可能なパーム油の生産のために、関連法規制に違反しないだけでなく、経済的に存続可能であること、環境面で適切であること、社会的に有益であることを求めています。
RSPOについてはご存じなくても「認証マークを見たことがある」という方も多いかも知れません。例えば図表2のロゴはカップ麺やシャンプーなどのパッケージに印刷されるもので、原材料に使われる「パーム油」が、森林破壊や強制労働を伴わずに生産されたものだと証明してくれるエコラベルの1つです。RSPOには生産段階と流通段階でそれぞれ認証制度があり、前者はP&C認証、後者はSCC認証といいます。アブラヤシ農園から始まり、最終製品ができるまでの各工程を認証することにより、全工程にわたる管理の連鎖(図表3)がつながり、最終製品中のパーム油の追跡が可能となります。
*1 RSPOの原則と基準:1)透明性へのコミットメント、2)適用法令と規則の遵守、3)長期的な経済・財政における実行可能性へのコミットメント、4)生産者、搾油工場の適切なベストプラクティス、5)環境への責任と自然資源、生物多様性の保全、6)農園・搾油工場労働者、影響を受ける地域社会への責任ある対応、7)責任ある新規農園開発、8)継続的改善へのコミットメント
当社はPRI署名機関としてPRI パーム油ワーキンググループ(以下、WG)にリード・マネージャーとして2016年に参加、以来継続的に活動しています。同WGは2011年に設立されたPRIでも最古のWGであり、パーム油生産による熱帯雨林や生物多様性の大規模な消失、労働者の劣悪な環境や土地開発での地域住民との衝突が大きな社会問題となったことが設立の背景です。
2018年には同WGにおいて、ASEANの金融機関に対するエンゲージメント活動を強化する方針が決定されました。パーム油サプライチェーンにおいて資金供給という重要な役割を果たしている金融機関に向けて、パーム油生産者等のコンプライアンスに対するモニタリング強化を促すことが主な目的です。2018年11月には、当社を含む同WGのメンバーがASEAN地域の金融機関を訪問、持続可能なパーム油セクターへ移行するための金融業界の役割明確化、金融機関のモニタリング強化を要請するエンゲージメントを実施しました。
SPOTTとはSustainability Palm Oil Transparency Toolkit(持続可能なパーム油の透明性ツールキット)の略称であり、ロンドン動物学会(ZSL=Zoological Society of London)により設立されたイニシアティブです。環境面での負の影響を減らすためにパーム油産業に関連するステークホルダーに資料や情報の提供を行っており、RSPOにも加盟しています。
SPOTTは、多数の大手パーム油生産業者についてその公表データに基き、100以上の指標を用いた企業評価を実施します。当該評価は、サプライヤー選定や変更におけるリスク評価の重要な情報源として利用することが出来るほか、投資家がエンゲージメントを行う際の貴重な情報ソースとして活用が可能です。
当社はパーム油サプライチェーンに対する活動が評価され、日本の機関投資家として唯一、サポーターネットワークのメンバーとして参画しています。またSPOTTのTAGメンバー(Palm Oil Technical Advisory Group)として、パーム油を含むコモディティ商品の持続的生産、流通を促す活動を推進しています。
2020年11月、インドネシア政府は、法令の簡素化によりビジネスの迅速化を進め経済的な効果を目指すための「オムニバス法」を制定しました。当社は、同法の施行が森林破壊に繋がる可能性を懸念し、社会的課題の解決に向けては、政府・公共政策機関と民間企業・公共事業体の連携が不可欠であり、投資先企業以外のマルチ・ステークホルダーにエンゲージメントしていく必要があると判断しました。
2020年9月、当社は海外35の運用機関と共同で同国政府に対し、「同法に基づく景気刺激策は森林破壊に繋がる恐れがある」とするレターを送付しました。その後、同国副外務大臣、環境林業大臣よりレターに対する個別返信を受領、同時に在日大使とも当社単独でエンゲージメントを実施し、
①長期投資家は、同法そのものを問題視しているのではなくその適用方法に透明性を求めている
②特に森林保全が損なわれないように配慮して頂きたい
等の意見表明を行いました。同国政府見解として、法施行にあたっては投資家や環境団体など様々なステークホルダーを意識していること、景気刺激と環境保全のバランス、特に森林破壊防止策については十分な考慮を行うこと、について言及を得ました。
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