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コロナ禍におけるワクチン不足でも明らかとなりましたが、医薬品アクセス問題とは、医療保険制度が充実した先進国と違って途上国では貧困や医療保険制度の未整備等を理由に最低限必要な医薬品や医療サービスが必要な人々に行き届かないことです。
こうした医薬品アクセス問題の改善・解決を目指して活動する国際イニシアチブがAccess to Medicine Foundation(以下、ATM)です。ATMは2003年にオランダで設立され、欧米の多くの運用機関・アセットオーナーが参加しました。当社は活動理念に賛同し、2018年4月、本邦運用機関として最初に署名しました。
ATMは医薬品業界に対して医薬品アクセス向上への貢献を促すことを目的として2年ごとにATM Indexを発表しています。日米欧の主要製薬企業20社を順位付けすることによって、各社ごとの医薬品アクセスに対する優れた点や課題を明らかとし、今後の取り組みに活かしてもらうように各社に働きかけるものです。
最新の2021年版ATM ランキングを見ると20社中、上位3社はグラクソスミスクライン(英国)、ノバルティス(スイス)、ジョンソン&ジョンソン(米国)の順となっており、日本企業では武田薬品工業の6位が最高位となっています。評価項目は医薬品アクセスに関するガバナンス、途上国を考慮した研究開発、途上国向け医薬品供給体制の3項目で、途上国への医療アクセスを事業戦略に織り込んで推進しているかを評価しています。
これまで世界の大手製薬企業は医療保険制度の整備された先進国において画期的な新薬を創出し、高い薬価(=高い医療的価値)で販売することによって収益拡大を実現し、企業価値の向上を図ってきました。高価な抗がん剤やC型肝炎治療薬などが良い例です。しかしながら、これでは途上国で猛威を奮っているマラリアなどの感染症への研究開発が十分に進みません。また、製薬企業が特許切れによる薬価引き下げを回避するために不当に特許延長を図ろうとすれば、途上国への安価な特許切れ薬剤(ジェネリック)の普及を妨げることになります。こうした途上国への医療アクセスを妨げる活動を解消するために、ATMは製薬企業に対してマネジメントがリーダーシップを発揮して医療アクセス向上を事業戦略に取り込み、将来の途上国展開を念頭に置いた研究開発、生産、販売インフラ整備だけでなく、医薬品を購入できない患者のための支援、医療機関や医療従事者支援まで計画することを求めています。
ATMに参画している当社は、ATM Indexへの組み入れ20社に対するエンゲージメント活動を通じて、途上国への医療アクセス向上へ貢献するよう働きかけています。
次回は「薬剤耐性問題への取り組み」を掲載予定です。
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