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『イノベーション』を期待する分野として、2020年12月25日、政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表(その後、2021年6月18日改訂)し、14の重要分野ごとに高い目標を設定する実行計画を策定、実現に向けてあらゆる政策を総動員する方針を示しました。(図表8)
図表8:「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」における14の重要分野
(出所)経済産業者「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を基にSMTAM・日本総研作成
これら14の分野はいずれも重要かつ注目すべきでありますが、今回の調査は「波及範囲」「普及時期」「技術優位性」「温室効果ガスギャップ」の4つの視点を総合的に鑑み、『蓄電池』『水素・燃料アンモニア』『カーボンリサイクル』の3分野について実施しました。それぞれ異なる視点で環境貢献に資するとともに、取り組む投資先企業にとってはビジネスチャンスにもつながると考えています。(図表9)他方、これら3分野はいずれも解決すべき課題が多く、技術的・商業的普及が相互に影響を及ぼし合うことが大きな課題であると考えています。電力系統への負荷を最小限に抑えつつ再エネ導入を進めるためには、「蓄電池」のさらなる導入は欠かせません。同時に、クリーンで低廉かつ潤沢な「水素・燃料アンモニア」が、再エネによる生産やバリューチェーン構築により得られれば、既存火力発電のクリーン化が進み、再エネ導入に必要な調整力も確保されます。さらに、分離・回収した二酸化炭素を再利用する「カーボンリサイクル」は、水素を用いることで燃料を含むさまざまな用途に拡大できます。このような循環を作り出さない限り、日本のカーボンニュートラルの姿を実現することは難しいとの結論に至りました。
日本のエネルギーインフラを大きく作り変えつつ、脱炭素に向けて適切な移行を進めるには、資金供給を含めた政策誘導と政策の予見可能性の向上によって、全ての企業に適切な移行を促していくことが求められます。また、特に、温室効果ガスの多排出企業に対しては、既存の政策サポート・補助金だけでは圧倒的に資金が不足することが想定されるため、「野心的な目標設定」を要件とするトランジション・ファイナンスを通じた資金提供を通じて、脱炭素に向けた取り組みへのサポートを充実させることが現実解であると考えています。
図表9:グリーン成長戦略14分野の「波及範囲」「普及時期」「技術優位性」「温室効果ガスギャップ」比較
(出所)日本総研作成
当社は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、トランジションを確実に進展させるために、投資先各企業における「野心的な目標設定」とその「情報開示」が重要であると考えています。そのための橋渡し役として2030年の中間目標の設定が必要だと考えていますが、中間目標設定を行っていても、具体的な移行計画や事業計画、資金計画を策定していない企業は多いと認識しています。各企業は経済的なパフォーマンスを落とさず、脱炭素社会の実現を目指し、かつその実現確度を上げていくことが必要です。例えば、温室効果ガス排出量の削減目標として示されている2030・2050年を見据えるとこれまでよりも長期的視点に立ち、10年単位での事業計画・投資計画の策定が求められます。当社は、投資先企業ごとに置かれている状況、事業環境の違いを理解しながらエンゲージメントを通じて取り組みの具体化・支援をしていきたいと考えています。2050年のカーボンニュートラルに向けて、投資先企業が着実に取り組んでいくために必要なトランジション資金の提供を通じて、企業のカーボンニュートラルへの取り組みをサポートすることが当社の役割だと考えており、その役割を全うすることで、投資先企業と共に社会・産業構造の大転換に貢献していく所存です。
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