ウィークリーレポート・マンスリーレポート
印刷する場合はこちらをご利用ください。▶ PDF版を表示
サステナブル投資への関心の高まりとその残高の拡大とともに、同投資の実態を伴わない運用や誇張した販売・マーケティング(いわゆるグリーンウォッシング)への懸念も高まっています。こうした中、サステナブル投資の情報開示等についての各種規制の検討・導入がなされ、更にその内容についても高度化や厳格化が推し進められています。
海外規制は各国、各エリアで適用されるものですが、グローバルに調和(harmonization)される方向にあります。日本の資産運用ビジネスにおいても影響が大きく、対応や準備が必要です。
グローバルなサステナブル投資はここ数年で急拡大しています。世界のESG投資額の統計を集計している国際団体GSIA (Global Sustainable Investment Alliance)のデータによると、5大市場(欧州、米国、カナダ、豪州、日本)におけるサステナブル投資の残高は2020年に35.3兆ドルに達しています。過去4年間で55%の増加となり、投資残高全体に占める割合は35.9%まで高まっています。投資戦略別サステナブル投資残高では、「ESGインテグレーション」が最大であり、日本では「ESGインテグレーション」の投資残高が多いことに加えて、他地域と比べて「企業エンゲージメントと株主行動(議決権行使)」の投資割合が多いことが特徴です。昨年11月末にJSIF(日本サステナブル投資フォーラム)が公表した、日本の機関投資家を中心に行ったアンケートの結果でも、2022年3月時点でのサステナブル投資残高は494兆円となり、その割合は62%となっています。
また、サステナブル投資商品の設定も継続しています。相場環境やサステナブル投資に関する開示規制などの影響もあり、新ファンドの設定ペースは鈍化しているものの、Morningstarの2022年第4四半期レポートによると、2022年初からESG投信はグローバルで800本超が新規設定されています。
足元では、主に運用機関及び投資商品の透明性を高める傾向が強まっています。中でもサステナブル投資に関する情報開示の強化と投資商品の実態を反映させるためのファンド名称に関する内容が増えています。
情報開示の強化に関する規制の基本的な考え方は、①サステナブル投資の程度、すなわち投資の意思決定プロセスにおいてサステナビリティの考慮が重要な要素となっているか否かによってファンド区分がなされ、その区分によって要求される情報開示の内容や深度が異なるという点と、②ファンド区分の判断は各規制内容に照らし運用会社自ら行う、という2点です。
EUのサステナブルファイナンス開示規則であるSFDR(Sustainable Finance Disclosure Regulation)は、欧州委員会が2018年3月に公表した「
SFDRは既に2021年3月から適用されています。ファンド区分については、第6条ファンド、E(環境)とS(社会)の特性を促進する第8条ファンド、サステナブルな投資目的を有する第9条ファンドの3区分が設定され、規制内容が具体化する中で、ファンド区分や要求される情報開示内容が高度化されています。また、ESMA(European Securities and Markets Authority:欧州証券市場監督局)は2022年11月に、ファンドの名称にESGに関する用語を使用する際の数値基準導入案を公表しています。
英国ではFCAが2022年10月にESG投資に関する規制案の追加意見募集を開始しました。この中で、サステナブル投資商品を3つ(Sustainable Focus/Sustainable Improvers/Sustainable Impact)に区分し、サステナブル投資に該当しないファンドでファンド名やマーケティングにサステナビリティに関する用語を使用することを制限しています。
米国でもSECが2022年5月にESG投資に関する開示規制の強化案を提示しました。この中でも、サステナブル投資商品の3区分(Integration Funds/ESG-Focused Funds/Impact Funds)が設定されています。またファンド名称に関する規則の改正案も示され、ESGを示唆する名称のファンドに対し、ポートフォリオの80%以上をESG関連資産とすることを求めています。
日本においても、2022年12月に金融庁から、ESG投信の範囲を定めるとともに、ESGに関する公募投資信託の情報開示や投資信託委託会社の態勢整備について、具体的な検証項目を定めた、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針の改正案が示されています。
こうした規制等は、適切に設定・運用されることにより、運用会社のサステナブル投資の運用プロセス・アプローチの強化が図られ、顧客の投資判断が適切に行えるようになることが期待されます。
***************************************************************
※当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
※当資料は信頼できると判断した各種情報等に基づき作成していますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。
※当資料では事例として特定の企業や銘柄に触れる場合がありますが、特定の有価証券への投資を推奨するものではなく、また当社ファンドが当該有価証券に投資することを保証するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。