ウィークリーレポート・マンスリーレポート
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国連機関が主導して制定されたPRIは、機関投資家の意思決定プロセスにESGを考慮することを謳ったもので、当社はPRI発足時に2006年に署名しました。当社ではPRIや他の署名団体等が開催する国際会議にも参加し最先端の知見を得て国内にも還流することで、最新の動向を踏まえた取り組みを通じスチュワードシップ活動の実効性を高めることに努めています。
当社は2023年東京総会に続き昨年もPRI年次総会にスポンサーとして参加しました。
PRI 年次総会へのスポンサー参加は、当社の責任投資原則へのコミットメントを示したものです。総会スポンサー参加を通じ、日本ひいては世界の責任投資の推進に貢献し、お客さまの中長期的な投資リターンの維持・向上と同時に社会課題の解決に寄与すべく、取り組んでいます。
ここでは、2024年10月にトロントで開催されたPRI年次総会と当社の活動概要を紹介します。
写真1:PRIトロント総会 会場の様子 写真2:オープニングセレモニー:カナダ先住民= First Nations
今回のPRI in Person はカナダ・トロントにて2024年10月8日(火)から10日(木)の3日間に渡り開催されました。48か国から前回を上回る1,700名超が参加(前回の日本は約1,320名)しました。
今回のテーマは、「Progressing global action on responsible investment」(責任投資に関するグローバルな行動の進展)。サステナビリティ/責任投資の対象領域の「拡張」を感じる内容でした。またこうしたグローバルな潮流は、当社が取り組んできたスチュワードシップ活動の「拡張」と適合した内容であり、当社が推進してきたグローバルな活動が適切であったことを確認出来る内容でもありました。
□拡張1;マテリアリティの「拡張」Social・人権へ
市場参加者が注力するESG*1マテリアリティが、当初の気候変動から自然資本に拡張し、足元ではSocial・人権に拡大しています。
ジャストトランジション(公正な移行*2)というキーワードも当総会では頻出で、ネットゼロ達成に向け、今後は「誰も取り残さない」ことが重視される流れを感じました。自然資本やSocial・人権に社会課題の注目が拡張する中で、社会へのインパクトだけでなく、投資家として社会へのインパクトを通じた企業価値への影響という観点が重要であることも再確認されました。
*1ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)を考慮した投資活動や経営・事業活動を指します。
*2「公正な移行(Just Transition)」は、気候変動や生物多様性などの社会課題の解決に取り組むにあたり、すべてのステークホルダーにとって公正かつ平等な方法により持続可能な社会への移行を目指す概念
□拡張2;気候変動対応の実装への「拡張」トランジションへ
気候変動についても、単なる脱炭素の重要性の議論から、ネットゼロ社会の実現のためのより実践的なトランジション・プランの検討や策定に加え、如何にトランジション・ファイナンスを増加させていくかについての話題への拡張がありました。
トランジションは投資機会との結びつきが高まる課題であり、投資家として歓迎する流れです。一方で、トランジションを通じたネットゼロの達成には、投資家は、自国だけでなく国境をまたいだポリシーエンゲージメントと呼ばれるトップダウンアプローチを積極的に行うべきであり、また、政策立案者は、投資家にとって分かり易く、具体的な政策立案を心がけるべきであるといった内容も強調されました。
□拡張3;地域の「拡張」新興国へも
サステナブル投資や考え方に地域的な広がりの必要性も感じました。即ち、今までのサステナブル投資は欧米を中心とした先進国を中心とした議論でありましたが、投資リターンの確保と上述のような多くの社会課題の解決のためには、今後は新興国を巻き込みサステナブル投資の地理的拡張が必要であるという文脈が強調されました。
従来、海外のアセットオーナーに比べ、日本の大手公的年金はPRI署名やPRI総会への参加も非常に少数でしたが、今回のPRI総会では現地参加する先が増えたことも大きな特徴でした。2023年に東京で開催されたPRI総会にて岸田首相(当時)の発言もあり、日本の大手公的年金のPRI署名は概ね進展。加えて、昨年に策定されたアセットオーナー・プリンシプルへの賛同もあり、各公的年金は自身のスチュワードシップ活動の強化を進めていることが確認できました。
今回は新たに大手公的年金2社が現地参加。今後についても、今回参加していない公的年金の参加増加も考えられます。
気候変動対応などの社会課題の解決とその対応加速のために、インベストメントチェーン*3の各参加者、ステークホルダーの団結や協業を求める強いメッセージが伝えられました。
*3投資家から企業への資金の流れが、持続的な企業価値拡大をもたらし、さらにその利益が最終的に家計まで還元されるという一連の価値創造の連鎖のことを指します。
「今回、カナダ・トロントでPRIを開催する意義があります。つまり、当地は石炭化石燃料に大きく依存する経済であり、かつ重大な気候関連のリスクに直面しているからです。今回、PRIトロントにおいて、署名機関とカナダの規制当局、投資家と先住民族などの対話などを通じ、カナダにおける気候変動問題の解決に向け、強くかつ団結した行動を推進していきたいと思います。
PRIが設立された20年前と比較すると、現在、多くのかつ複雑な問題がある状況(気候変動問題、生物多様性の損失、紛争など)です。世界の運用資産の1/2が責任投資資産であり、協業活動を通じ、実社会にも影響を及ぼすことが可能なのです。
投資家はサステイナブル・ゴールに単独で到達できません。だからこそ、我々は政府や他の金融当局などとエンゲージメントを行い、政府ポリシーや規制の枠組みに影響を与える必要があると考えています。」
スポンサー参加により可能となる、会場でのブース出展とタワー広告を前回の東京総会から継続することで、日本の運用会社としての当社のイメージとブランドの浸透を図るとともに、LinkedIn (https://jp.linkedin.com/company/sumitrust-am)なども活用した情報発信に努めました。
またこの機会を利用し、海外の機関投資家の皆様とも様々なネットワーキング(写真3)を行い、関係深化に繋げました。
写真3:スポンサーブースでのネットワークキングの様子 写真4:会場通路に展示された当社タワー広告
今総会の最終セッションにて次回のPRI 総会が、ブラジルのサン・パウロにおいて2025年11 月5 日(水)から7 日(金)に開催されることが公表されました。
通常、PRI 総会は毎年10 月ですが、同総会開催日程を翌週の10 日(月)から同国ベレンで開催されるCOP30 (第30回国連気候変動枠組条約締約国会議)と繋げることで、関係者や総会参加者の利便性を高めるとともに、サステナブル投資におけるグローバルサウスに対する関心を高め、気候変動のみならず自然資本や人権などに関する議論の深まりや、いずれの会議に対しても世界的な注目の高まりが見込まれます。