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はじめに
2024年から新たに始まる新NISAは、現行NISA(2023年までのNISAを指します。以下、同様)に比べて、特に制度の恒久化と非課税保有限度額の拡大が大きなポイントです。
また、新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの投資枠が新たに設定されます。
新NISAは、現行NISAと比べてより制限が緩和され、より利用しやすくなりましたが、一方で注意したいポイントがあります。
この記事では、新NISAの利用しやすくなった点、注意したい点について解説します。
【目次】
1. 新NISAの利用しやすくなった点
1.1. 非課税保有期間の無期限化
1.2. 非課税保有限度額の拡大
1.3. つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能に
1.4. 非課税投資枠の再利用が可能に
1.5. 年間投資枠の拡大
2. 新NISAで注意したいポイント
2.1. 2023年までの一般NISAで投資可能なファンドが一部除外に
2.2. 口座を開設できるのは18歳以上
3. 新NISAの始め方
4. まとめ
新NISAは現行NISAと比べて、非課税保有期間の無期限化、非課税保有限度額や年間投資枠の拡大などにより利用しやすくなりました。また、金融商品を売却した場合は、その分の非課税投資枠を再利用できます。
さらに、つみたて投資枠と成長投資枠が併用できるようになりました。
新NISAと現行NISAの比較表を改めて掲載しますのでここでおさらいしておきましょう。
表1
項目 | 現行NISA | 新NISA | ||
---|---|---|---|---|
つみたてNISA※1 | 一般NISA※1 | つみたて投資枠※2 | 成長投資枠※2 | |
年間投資枠 | 40万円 | 120万円 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有期間 | 20年間 | 5年間 | 無期限化 | 無期限化 |
非課税保有限度額(総枠) | 800万円※3 | 600万円※3 | 1,800万円※4 | |
1,200万円(内数) | ||||
口座開設期間 | 2023年まで | 2023年まで | 恒久化 | 恒久化 |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託※5 | 上場株式・投資信託等 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託※6 | 上場株式・投資信託等※7 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 | 18歳以上 | 18歳以上 |
現行NISA との関係 |
2023年末までに現行の一般NISAおよびつみたてNISAにおいて投資した商品は、新しい制度の外枠で、現行NISAにおける非課税措置を適用※8 |
※1 つみたてNISAと一般NISAは選択制
※2 つみたて投資枠と成長投資枠は併用可
※3 枠の再利用は不可
※4 薄価残高方式で管理(枠の再利用が可能)
※5 金融庁の基準を満たした投資信託に限定
※6 現行のつみたてNISA対象商品と同様
※7 ①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外
※8 現行NISAから新NISAへのロールオーバーは不可
ここからは新NISAの変更点と利用しやすくなった点について詳しく解説していきます。
現行NISAでは、一般NISAの非課税期間は5年間です。5年経過後は課税口座への移管、売却、もしくはロールオーバーの手続きが必要です。*1
ロールオーバーをすれば非課税で保有し続けられるものの、ロールオーバーした金額分は非課税投資枠を使っていることになるため、新たに購入できる枠が減ることになります。一方で新NISAでは、限度額内であれば、ロールオーバーの手続きなく無期限で投資信託や株式などの保有が継続できます。
*1 出所)金融庁「一般NISAの基礎知識」
新NISAの非課税保有限度額は、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて1,800万円です。現行NISAの非課税保有限度額は、つみたてNISAで800万円、一般NISAでは600万円で併用できないため、大幅に拡大しています。
新NISAでは現行NISAよりも非課税で投資できる金額が増え、税制上の恩恵を多く受けられるようになりました。
現行NISAでは、つみたてNISAと一般NISAは併用できません。一方、新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能となり、投資信託を積立投資しながら、株式や投資信託をスポット購入するなど、より柔軟な投資プランを組み立てることが可能となりました。ただし、つみたて投資枠のみを利用する場合の非課税保有限度額は1,800万円ですが、成長投資枠のみを利用する場合は1,200万円までである点には注意が必要です。
積立投資は、長期的に積み立てることで時間分散効果によって資産を育てる方法です。*2
積立投資とスポット購入の両方ができることは新NISAが利用しやすくなった点といえます。
*2 出所)金融庁「投資の基本」
現行NISAでは非課税投資枠の再利用はできませんが、新NISAでは非課税投資枠の再利用が可能となりました。※9
例えば、住宅購入や子どもの進学など一時的にまとまった資金が必要なときに保有している投資信託などを売却して現金化すると、翌年以降に売却した分の非課税投資枠を再利用できます。
非課税保有限度額1,800万円は、取得価格ベースです。100万円で購入した投資信託を120万円で売却した場合、再利用できる非課税投資枠は取得価格の100万円となります。非課税投資枠内で購入や売却の自由度が上がったため、ライフプランに合わせて柔軟に投資を行えるようになりました。
※9 非課税投資枠の再利用は、年間投資枠の上限360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)までとなります。
現行NISAでは、年間投資枠がつみたてNISAで年間40万円、一般NISAでは年間120万円です。*3新NISAでは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円となり年間投資枠が大幅に引き上げられました。
つみたて投資枠では条件を満たした投資信託を、成長投資枠ではつみたて投資枠で購入できない株式や投資信託も購入できます。成長投資枠でスポット購入はもちろん、投資信託の積立投資も可能なので、最大で年間360万円を積み立てることができます。
*3 出所)金融庁「NISAとは?」
新NISAでは、非課税保有限度額が1,800万円に増えることや、年間投資枠が大幅に増えることなど利用しやすくなる点を紹介しました。しかし、新NISAには注意したいポイントもあることを知っておくことが大切です。
新NISAの成長投資枠で購入できる金融商品は、投資信託や株式などとなっており、これまでの一般NISAとほとんど同じです。しかし、これまでより長期保有にかなった商品であるかを判断する要件が加わったことにより、一部除外(整理・監理銘柄の株式や、信託期間20年未満、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託、毎月分配型の投資信託など)となる投資信託や株式があります。
そもそも新NISAは、長期的な資産形成を目的とする制度です。投資初心者でも、長期投資の目的に合った金融商品が選びやすくなったといえます。
なお、つみたて投資枠で購入できる投資信託は、現行のつみたてNISAで購入できるものと同一となっています。
新NISAでは口座開設できるのは18歳以上の成年に限られています。これまではジュニアNISAを活用して未成年でも口座開設が可能でしたが、2023年末にジュニアNISAが廃止されるため、18歳未満の未成年者はNISA口座を開設できません。
新NISAの始め方は、これまでNISAを利用していたか、これまでと同じ金融機関で新NISAを始めるかなど、状況によって異なります。新NISAをきっかけに初めてNISA口座を開設する場合、希望の金融機関で非課税口座の開設を申し込みましょう。
また、現在NISA口座がある金融機関で、継続して新NISAを利用する場合は、自動で新NISA口座へ切り替わるため手続き不要です。