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はじめに
2024年から開始する新NISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠が新たに設けられることになります。
この記事では、新NISAの枠の1つである「成長投資枠」について解説します。もう1つの枠である「つみたて投資枠」との違いや、現行NISA(2023年までのNISAを指します。以下、同様。)との違いについてだけではなく、成長投資枠で購入できる商品も紹介しているため、自分に合う商品があるかチェックしてみてください。
【目次】
1. 新NISAの成長投資枠とは
2. 新NISAにおける【つみたて投資枠】と【成長投資枠】の違い
3. 【つみたて投資枠】と【成長投資枠】の配分
4. 新NISAの成長投資枠の対象商品
4.1. 成長投資枠で購入できる商品
4.2. 成長投資枠では購入できない商品
5. 現行NISAと新NISAの変更点
6. 現行NISAの投資枠との違い
6.1. 年間投資枠が拡大する
6.2. 非課税保有期間が無期限になる
6.3. 非課税保有限度額が拡大する
6.4. 口座開設期間が恒久化される
6.5. つみたて投資枠との併用が可能に
新NISAの成長投資枠は、現行NISAの「一般NISA」に該当する投資枠です。成長投資枠の概要は表1の通りです。*1
表1
概要 | メリット・特徴 |
---|---|
以前は併用できなかった「つみたて投資枠」との併用が可能 | 「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠で投資できることで、より柔軟な投資プランを組み立てられる |
つみたて投資枠より対象商品が多い | 投資信託はもちろん、上場株式にも投資できる |
投資方法は一括投資と積立投資ともに可能 | 成長投資枠内でも、「つみたて投資枠」の対象商品を購入することができる |
1,800万円の非課税保有限度額のうち、「成長投資枠」で使えるのは 1,200万円まで |
「つみたて投資枠」だけで1,800万円を使うことも可能。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用も可能で、投資の選択肢が広がる |
これまで新NISAにおける「成長投資枠」について解説しましたが、「つみたて投資枠」とは、どのような違いがあるのでしょうか。2つの枠の主な違いは表2の通りです。*1
表2
項目 | つみたて投資枠※1 | 成長投資枠※1 |
---|---|---|
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有期間 | 無期限化 | 無期限化 |
非課税保有限度額(総枠) | 1,800万円※2 | |
1,200万円(内数) | ||
口座開設期間 | 恒久化 | 恒久化 |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託※3 | 上場株式・投資信託等※4 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
現行制度との関係 | 2023年末までに現行の一般NISAおよびつみたてNISA制度において投資した商品は、新しい制度の外枠で、現行制度における非課税措置を適用※5 |
※1 つみたて投資枠と成長投資枠は併用可
※2 薄価残高方式で管理(枠の再利用が可能)
※3 現行のつみたてNISA対象商品と同様
※4 ①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外
※5 現行制度から新NISAへのロールオーバーは不可
「成長投資枠」は、投資信託だけでなく上場株式の購入も可能なため「つみたて投資枠」より自由度が高くなっています。
成長投資枠の投資対象とならない商品については後ほど解説します。
新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠を併用できるため、それぞれ個人のニーズに合った投資ができるようになります。
たとえば、成長投資枠でしか投資できない株式は成長投資枠で投資し、どちらの枠でも投資できる商品はつみたて投資枠で投資するなど、枠の使い分けができます。
ここでは、2つの枠の具体的な活用例をご紹介します。ご自身の状況と合わせて投資プランの参考にしてください。
① 長期投資が可能な20代、30代の方の活用例
つみたて投資枠:毎月5万円×30年=1,800万円
つみたて投資枠のみを使って、長期保有を目的とした投資信託を積み立てていくプランです。
毎月一定の投資信託を積み立てるため、時間分散となりリスクを抑えた運用ができます。はじめは月々1万円からなど無理のない金額で積み立てを行い、余裕資金が増えた段階で積立額を増額しても、非課税枠を最大まで使い切ることが可能となります。
非課税枠を使い切らなくとも税制上のメリットは受けられますので、ご自身の資産状況に応じて無理のない資産形成を行いましょう。
② ボーナスを投資資金に回す方の活用例
つみたて投資枠:毎月5万×20年=1,200万円
成長投資枠:ボーナス月に15万 年間30万×20年=600万円
この場合、ボーナス月は成長投資枠を使っての一括投資となります。成長投資枠で購入できる投資信託や、上場株式を購入することも可能です。
新NISAでつみたて投資枠と成長投資枠の2つの枠が併用可能になると、投資の自由度が上がり、個人のニーズに合った選択ができるようになります。
年間投資枠を必ず使い切る必要はありません。無理せずその時々の状況に合わせて柔軟に新NISAを活用しましょう。
成長投資枠の投資対象は、上場株式・投資信託です。投資信託はもちろん上場株式にも投資でき、つみたて投資枠よりも投資対象商品が多いことが特徴です。
成長投資枠の対象商品は投資信託協会の「NISA成長投資枠の対象商品」ページから確認することができます。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの新NISA対象商品はこちら
成長投資枠では、購入できない商品もあります。上場廃止が決まった整理銘柄の株式や上場廃止の可能性がある監理銘柄の株式は、成長投資枠では購入できません。さらに信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託も除外されます。デリバティブ取引を用いた投資信託などにも投資できません。*1
新NISAの成長投資枠とは、現行NISAの一般NISAに該当する投資枠です。詳しくは次の項目で解説しますが、そもそも新NISAでは現行NISAとどのような点が変わったのか、改めて確認しておきましょう。
表3
項目 | 現行NISA | 新NISA | ||
---|---|---|---|---|
つみたてNISA※1 | 一般NISA※1 | つみたて投資枠※2 | 成長投資枠※2 | |
年間投資枠 | 40万円 | 120万円 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有期間 | 20年間 | 5年間 | 無期限化 | 無期限化 |
非課税保有限度額(総枠) | 800万円※3 | 600万円※3 | 1,800万円※4 | |
1,200万円(内数) | ||||
口座開設期間 | 2023年まで | 2023年まで | 恒久化 | 恒久化 |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託※5 | 上場株式・投資信託等 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託※6 | 上場株式・投資信託等※7 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 | 18歳以上 | 18歳以上 |
現行NISAの制度との関係 | 2023年末までに現行の一般NISAおよびつみたてNISA制度において投資した商品は、新しい制度の外枠で、現行制度における非課税措置を適用※8 |
※1 つみたてNISAと一般NISAは選択制
※2 つみたて投資枠と成長投資枠は併用可
※3 枠の再利用は不可
※4 薄価残高方式で管理(枠の再利用が可能)
※5 金融庁の基準を満たした投資信託に限定
※6 現行のつみたてNISA対象商品と同様
※7 ①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外
※8 現行NISAから新NISAへのロールオーバーは不可
新NISAは現行NISAと比べて制限が緩和され、制度が恒久化し、非課税保有限度額が拡大します。つまり、長いライフプランに合わせ、制度を活用した資産形成の自由度が格段に高まった制度です。
現行NISAと新NISAの違いについて、詳しくは「【2024年開始】新NISAとは?現行NISAとの違いや改正のポイント」の記事でも解説していますのでご覧ください。
成長投資枠は現行NISAの「一般NISA」に該当する非課税投資枠です。
新NISAの成長投資枠と現行NISAの一般NISAの違いは表4の通りです。
表4
一般NISA | 成長投資枠 | |
---|---|---|
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有期間 | 5年間 | 無期限化 |
非課税保有限度額 | 600万円 | 1,200万円 |
口座開設期間 | 2023年まで | 恒久化 |
つみたて投資枠との併用 | できない | できる |
一般NISAの非課税保有期間は5年間でしたが、成長投資枠は無期限で保有できるため、長期間非課税で保有することが可能となり、より長期での資産形成に適した制度に変更されます。
現行NISAのうち一般NISAの年間投資枠は120万円だったのに対し、新NISAの成長投資枠では240万円に拡大されています。
一般NISAは非課税保有期間が5年間でした。成長投資枠は非課税保有期間が無期限化され、より長期で投資ができるようになります。
成長投資枠の非課税保有限度額は1,200万円と、一般NISAでは600万円だったため2倍に拡大されます。より多くの資産を非課税のメリットを受けながら運用できるようになります。新NISAの限度額について、「新NISAの限度額はいくら?年間投資枠の上限額 や非課税投資枠の再利用についても解説」の記事で解説していますのでご確認ください。
現行NISAの口座開設期間は2023年まででしたが、新NISAでは恒久化されました。いつでも口座開設が可能になります。
現行NISAでは一般NISAとつみたてNISAの併用はできませんでした。しかし、新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能となり、より柔軟な投資プランを組み立てられるようになります。
新NISAは、非課税投資枠の拡大や制度が恒久化されるなど、大幅に拡充され、運用の幅も大きく広がります。
その中でも成長投資枠は、つみたて投資枠と比べて幅広い商品に投資ができ、年間投資枠も大きくなっており、より自由度が高いと言えます。
現行NISAと新NISAの違い、つみたて投資枠と成長投資枠の違いを把握し、実際に成長投資枠で購入できる商品を見て、自分に合った投資方法で着実に資産形成しましょう。