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私たちは何故株を買いたいと思うのでしょうか?
儲かるから?
株式以外にも儲かる投資対象となる金融商品は色々あります。貸付・借入・ローン、債券、不動産、預金、と比較して、“株式の儲かる”は何か特徴があるのでしょうか?
商品ごとに、その特徴を見ていきましょう
貸付・借り入れ・ローンの特徴は3点あります。
1:お金を貸す人と借りる人が明確に取引の相手を認識しています。「春山がA銀行から借りる、田中さんが村山さんに貸す」などですが、この相手を認識した取引は相対取引と呼ばれています。
2:始まりと終わりが明示されています。期限が来たら耳を揃えて全額返済する義務があるということですが、これは有期契約と呼ばれています。
3:お金の借り賃として、お金を借りる人はお金を貸す人に利息(金利)を払います。
次に債券ですが、貸付・借り入れ・ローンの親戚です。
違う点は貸す人が沢山いる(多くの場合、不特定多数)ので、貸す人手と借りる人の間を取り持つ仲介業者が必要な事務手続き(利払い管理、満期資金返済管理など)を担当することです。
貸付・借り入れ・ローン、債券の場合、借りる人が貸す人に払う金利があり、この利率を最初に決めます。
金利の性格は、賃貸マンションの賃料に類似しています。
借りたい人が多いと賃料が上がりますが、少ないと下がります。貸す側は、どうしても貸したいなら賃料を下げますが、空室期間があってもいいのであれば賃料を高くすることも可能です。
需要と供給の関係で決まる賃料は、いわば賃貸マンションの値段と言えます。
貸付・借り入れ・ローン、債券では、お金が欲しいか欲しくないかという「お金の需要と供給」の関係で金利が決まります。貸付・借り入れ・ローン、債券では、お金の値段である金利を最初に決めるのです。そして、その金利は満期まで変わりません。(変動金利という商品がありますが、ここでは捨象します。)
金利は相手の返済能力(信用スコア)に応じて水準に格差が生じます。返済リスクがある人には割増金利が適応されます。近年は信用の判定(信用スコアリング)にAIの技術が導入されており、中国のアント・グループ(=アリババの子会社)では、ビッグ・データをAIで解析して、3分で貸せるか貸せないかの信用判定ができるようになっています。
不動産投資の特徴ですが・・・
1:相対取引です。
2:同じものが存在しない、その物件を所有できるのは世界中であなた一人、持って帰れない、倉庫に保管できない、まさに「この場から動かせない巨大なモノ」という投資対象が不動産です。
3:取引金額が桁違いに巨額です。20~30万円で買える株や債券とは別世界ですし、借金をして(=レバレッジをかけて、株で言えば“信用取引”)投資するのが通常になっています。
4:同じものが存在しない為に、物件ごとに投資家が自分で物件の価値(良し悪し、価格に見合っているか)を判断する必要があります。
5:売るにしても買うにしても、手間暇がかかります。物件価格に対する諸費用や必要経費の割合がかなり大きいのも特徴です。
6:投資に際して最も留意すべきことは、売り買いが自由にできません。売り手や買い手が株や債券の世界に比べて非常に少ないので、保有物件を売りたいと思っても売却希望価格での買い手が現れるまでは売れません。株のように朝一番で成り行き売りなどは不動産投資の辞書には存在しません。
このように不動産投資は何かと手間暇やコストがかかるので、貸付・借り入れ・ローン、債券に比べて利回りが高くなっています。
不動産投資に関する春山の個人的な認識ですが、そこに集まる人が増えることが重要だと考えています。人口が増えるのか、または観光客が増えるのか、この二つの要因が人を集めるファクターだと思います。
さて株式です。
株式は「過去に資金調達をしました」という証文にすぎません。この証文は世界中の投資家の間を転々と流通します。「この人に株主になって欲しい」とか「こんな人には株主になって欲しくない」と企業側が願っても株式売買に影響を与えることはできません。
その代わり、株式で調達した資金は返還する必要はありません。返す必要のないお金を調達する際に株主に渡すのが株式なのです。株式の所有者が株を現金化したいと思ったら他の投資家に売却するしかありません。
そんな証文に過ぎない株式を投資家が欲しがる理由は何でしょうか?
「第1回:株式の起源(https://www.smtam.jp/report_column/detail/cat_11/01562/ )」で解説したように、株式は・・・・
やってみなはれ! 金は出したる。成功したら大儲けの山分けや~♪
・・・・という利益を投資家に分配するツールです。
売り上げが増えて利益が増えると、株主が受け取れる配当金(=利益の山分け)がアップする。そんな有望な企業の株なら欲しいと思うでしょう。欲しいと思う人が増えるなら、その株の値段は上がります。
つまり、投資家が株を欲しいと思うのは、配当金の増加(インカム・ゲインの増加)と株価値上昇(キャピタル・ゲインの増加)という二種類の期待です。
期待ですから、それは未来の売り上げ・経費・利益(=未来のファンダメンタルズ)をベースにしています。「参照:第9回:ファンダメンタルズ&チャート(https://www.smtam.jp/report_column/detail/cat_11/01740/)」
未来のことに関して誰も水晶玉を持っていませんので、様々な推定に基づいてリスク・テイクするのが株式投資だということになります。
債券の利息は当初に決められて変動しません。賃貸マンションの賃料は契約更改まで(通常は2年間)は変わりません。しかし、株式の配当金はとの時々の経営状態によって年の途中であっても上下動します。そんなリスクを株式は持っています。
このように株式は、予見できない未来に向かって投資家のお金をリスク・テイクさせる金融商品だと言えるのです。
最後に預金ですが、これも立派な投資対象としての金融商品です。
途中解約(その日のうちに解約して出金)も自由にできますが、一日未満だと利息が付きません。
なお、預金は金融システムの底辺を支える重要な金融商品なので、世界中の国が特別な措置を講じています。
日本でも、そもそも預金自体には元本保証がありませんが、政府が管轄する預金保険に銀行を強制加入させることで(保険料は銀行の支払い)預金者の財産を保護しています。
無利息預金は全額保護されますが、利息のつく預金は元本1,000万円までとその利息が保護されます。
未来のファンダメンタルズは株価とどのような関係を持っているのでしょうか?
・・・それは次回の話
次回掲載は4月1日の予定です。
※当資料は春山昇華氏の個人の見解であり、三井住友トラスト・アセットマネジメントの見解を示すものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
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