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はじめに
2024年1月から、NISAが大幅に拡充されました。もともと旧NISA(2023年までのNISAを指します。以下、同様)は、投資で得た収益にかかる約20%の税金が非課税になるお得な制度ですが、その非課税保有限度額が大幅にアップし、非課税保有期間も無期限になりました。これをきっかけに資産運用を考える方も多いのはないでしょうか。ここでは、新NISAで投資信託を購入するメリットや、商品選択のポイントについて分かりやすく解説します。
【目次】
1. そもそも投資信託とは?
1.1. 投資信託の種類
1.2. インデックスファンドとアクティブファンド、どちらを選ぶ?
2. 新NISAで投資信託を運用するメリット
3. 新NISA対象の投資信託は?
3.1. つみたて投資枠対象の投資信託
3.2. 成長投資枠対象の投資信託
4. 投資信託を選ぶ際のポイント
4.1. ポイント① ファンドの目的・特色
4.2. ポイント② 投資リスク
4.3. ポイント③ 運用実績
4.4. ポイント④ 手続・手数料等
5. 新NISAではどう投資信託を活用する?
5.1. ケース① 20~30代の若者世代
5.2. ケース② 40~50代の現役世代
5.3. ケース③ 60代以降の退職世代
6. まとめ
「投資信託(ファンド)」とは、多くの投資家から集めた個別の資金を1つにまとめ、専門家が投資先を選んで運用する金融商品です。国内外の債券、株式、商品(コモディティ)など幅広い投資対象の中から、各ファンドマネージャーが投資先を選んで配分を決めて運用し、運用の成果は投資口数に応じて投資家に分配されます。
投資信託のメリットは、本来多額の資金がなければ買えなかったり、個人で直接投資するのが難しかったりする幅広い投資先に、1万円程度から投資できる点です。積み立ての場合は100円など、さらに少額で投資できる金融機関もあります。また、長期で資産を形成する際にはリスクを抑えるために投資対象を分散するのが有効とされていますが、投資信託はそれ自体が分散投資を行っているため、1つのファンドだけでもその効果が期待できます。*1
*1 出所)投資信託協会「4つのメリット」
2023年11月末現在、国内で一般的に購入できる投資信託は6,000本程度*2ありますが、大きく分けるとインデックスファンドとアクティブファンドの2種類があります。
まず、インデックスファンドとは、あらかじめ定めた指数(インデックス)に連動する投資成果を目指して運用される投資信託です。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、S&P500(米国)が代表的な指数です。
一方、アクティブファンドとは、あらかじめ定めた指数を上回る運用成果を目指して運用される投資信託です。各ファンドマネージャーが独自の調査や分析を基に、積極的、戦略的に投資対象や組入比率、売買のタイミングなどの投資判断を行って運用します。
*2 出所)投資信託協会「統計データ」
インデックスファンドは値動きがわかりやすく、相対的に低コストで市場並みの運用成果が期待できる一方で、アクティブファンドはより高いリターンが得られる可能性があります。どちらがいいかは一概にいえませんが、投資初心者やわかりやすさを求める方はインデックスファンド、投資経験者やより高いリターンを求める方はアクティブファンドを選ぶ傾向があるようです。ご自身の投資の目的や、スタンスに合ったものを選ぶとよいでしょう。
新NISAでは投資信託のほか、上場株式、ETFなども対象となっていますが、新NISAで投資信託を運用すると以下のようなメリットがあります。
① 少額でも分散投資できる
投資の基本は、資産を複数の商品に分けてリスクを分散させる「分散投資」ですが、個人投資家が自分で分散投資をしようとすると多くの資金が必要となります。その点、投資信託は小口のお金を集めて1つの大きな資金として運用するため、個人でも少額の資金でさまざまな資産に分散投資することができ、リスクの軽減が期待できます。
② 非課税投資枠を使い切りやすい
新NISAで投資信託を選ぶと、上場株式やETFなどではできない「金額指定」によって購入ができるため、非課税保有限度額を無駄なく使い切ることができます。
③ 長期投資に向いている
投資信託は銘柄の入れ替えや資産分散を投資家に代わって専門家が行うため、長期で保有しやすい商品です。投資のプロが運用してくれるので、自分で調べたり判断したりする手間が省けます。
新NISAの対象となる投資信託は、旧NISAから一部変更があり、以下の通りです。
つみたて投資枠の対象は、旧NISAの「つみたてNISA」と同様、「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」に限定されています。
一方、成長投資枠の対象となる投資信託は、旧NISAの「一般NISA」の対象である全投資信託から、信託期間が20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託など、一部のファンドが除外されます。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの新NISA対象ファンド一覧はこちら
数ある投資信託の中から、自分に合ったものを選ぶのは至難の業です。そこで、選ぶ際に着目したいポイントを4つご紹介します。これらは全て、投資信託説明書(交付目論見書)に記載されているので、しっかり確認しましょう。
まず注目したいのは、そのファンドがどの国・地域の何に投資しているかという点です。投資する国・地域が、「国内」か「海外」か、また、「先進国」か「新興国」かによってリスクは異なります。「海外」に投資する場合は、為替変動リスクがあり、さらに「新興国」に投資する場合、「先進国」に比べリスク・リターンは大きくなるでしょう。また、投資する資産についても、「株式」、「債券」、「REIT」など様々ですが、一般的に「株式」はハイリスク・ハイリターン、「債券」は安定的な運用を望む方が選択される傾向にあります。また、ファンドによっては、特定の投資テーマに投資する「テーマ型投資信託」もあります。成長が見込まれるテーマに投資することで、将来的に大きな値上がりが期待できます。
なお、投資する国・地域や資産については、1つに集中させるより分散させることで相対的にリスクの低減が期待できます。ご自身のリスク許容度に合わせて選択することが大切です。*4
投資信託のような金融商品には、預貯金と違って元本保証がなく、リターンが期待できる半面、それに比例するリスクが存在します。例えば、投資対象の価格が変動することによる「価格変動リスク」、株式や債券の発行体の破綻などによる「信用リスク」、為替の変動による「為替変動リスク」、金利の変動による「金利変動リスク」、投資対象国の政情不安などによる「カントリーリスク」など、さまざまなリスクがあります。各ファンドによってリスクの種類は異なるので、購入前に確かめておきましょう。*4
交付目論見書には、そのファンドの時価である「基準価額」や規模を表す「純資産総額」などの推移のグラフが掲載されており、これまでの運用実績を確認することができます(新規設定ファンドを除く)。「ベンチマーク(目標とする指標)」があるファンドの場合は、「基準価額」と「ベンチマーク」の関係を見てみましょう。アクティブファンドの場合は、「ベンチマーク」と比較して上回っているか、インデックスファンドの場合は、「ベンチマーク」に連動しているかをチェックします。また、「純資産総額」が少ないファンドは繰上償還される可能性があることに注意が必要です。*4
投資信託は、購入時に販売会社に支払う「購入時手数料」や保有期間中にかかる「運用管理費用(信託報酬)」などのコストがかかります。中長期で運用する場合には「運用管理費用(信託報酬)」に注目しましょう。手数料と運用実績などを比較して、納得のいく商品を選びましょう。*4
*4 出所)投資信託協会「投資信託のすべてが見えてくる なるほど投資信託説明書ガイド」
では、実際に投資信託をどのように使えばいいのでしょうか? 新NISAで投資信託を活用する2つのケースを紹介しておきます。
20~30代の若い世代はまだ手元にまとまった資金がないケースも多いと思われるので、NISAのつみたて投資枠を使って、長期でコツコツ積み立てるのが資産形成の第一歩です。
新NISAでは生涯の非課税保有限度額が1,800万円で、そのうち成長投資枠は1,200万円までとなっています。つみたて投資枠にはこうした制限がないので、全額を積み立てで使うことも可能です。毎月5万円ずつ積み立てれば30年、10万円ずつなら15年でその枠まで到達することになります。
資産は長く運用すればするほど、利益が利益を生む「複利効果」が加わり、増えやすくなります。リバランス(資産配分の見直し)を自動で行う低コストのバランスファンドなどを利用して、時間をかけてじっくりと資産運用をしてみてはいかがでしょうか。
40~50代の現役世代は、老後のことが気になり始め、資産形成を考える方もいるでしょう。そこで、老後資金の目安の1つである2,000万円を意識した積み立てをしてはいかがでしょうか。
例えば40歳から毎月4万円ずつ、定年までの20年間積み立てたと仮定すると、20年後の積立終了時、累計投資元本は960万円です。それが、運用利回り5%で約1,644万円、7%なら約2,084万円に増えます。運用がうまくいけば、目安の1つである2,000万円の確保も期待できます。
子どもが独立して浮いた費用や早期退職金などでまとまった資金がある場合は、できるだけ早めに多くの資金をNISAで運用してはいかがでしょうか。
新NISAでは非課税保有期間が無期限となり、若い世代に有利な制度だと思われがちですが、「人生100年時代」を考えれば、60代以降の退職世代にとっても十分魅力的な制度です。
資産は運用期間が長いほど、複利効果が期待できます。したがって、相続財産や退職金などで手元に投資に回せる資金があるなら、早めに新NISAの非課税投資枠を使い切ることが、そのメリットを最大化する方策です。毎年、新NISAの年間投資枠(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、合計360万円)をフルに使って投資した場合、5年間で1,800万円の非課税保有限度額を使い切ることになります。非課税で運用できる期間をできるだけ長く確保するために、投資について前向きに考えてみてはいかがでしょうか。
大幅に拡充された新NISAのスタートで、恒久的に非課税の恩恵を受けながら資産運用ができる環境が整いました。この機会に投資信託をうまく活用して、ご自身に合った資産運用を考えてみてはかがでしょうか。
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