ウィークリーレポート・マンスリーレポート
印刷する場合はこちらをご利用ください。▶ PDF版を表示
「第9回:ファンダメンタルズとチャート(https://www.smtam.jp/report_column/detail/cat_11/01740/)」の続きです。
第9回の冒頭で、ファンダメンタルズとは売り上げ・経費・利益の状況だと説明しました。株価との関連では、ファンダメンタルズの3項目の中で何が一番株価に影響を与えているのでしょうか?
株価は「政治家や学者の“こうあるべし!”というべき論」では決まりません。株主や株主になろうとしている投資家の売買によって株価が形成されるのです。ですから株価は、株主と最も関係が深いモノによって決まります。「第10回:株を買いたいと思うのは何故?(https://www.smtam.jp/report_column/detail/cat_11/01763/)」に書いたことを再掲しますが、利益が増えると、株主が受け取れる配当金(=利益の山分け)がアップする。そんな有望な企業の株式なら欲しいと思うでしょう。つまり、利益が増えるか減るかが株主の最大の関心事なのです。このことは「第1回:株式の起源」(https://www.smtam.jp/report_column/detail/cat_11/01562/)」で述べたように株式はやってみなはれ! 金は出したる。成功したら大儲けの山分けや~♪という利益を投資家に分配するツールとして生まれたのが株式であるという歴史的事実からも納得できます。そして投資家の最大関心事である利益は、未来の利益です。未来のことが見通せる水晶玉を誰も持っていません。様々な推定に基づいて未来を予想しながらリスク・テイクするのが株式投資だということになります。ですから、株価と予想EPS(1株当たり利益)の間には因果関係があるのです。その因果関係が、「株価=予想EPS×因果関係」という式に結実するのです。この因果関係として存在するのがPER(株価収益率つまり、株価と利益の割合)です。
「投資家の最大関心事は未来の利益である」ということは、以下のことからも明白です。
1:会社が業績見通しを上方修正すると株価が上昇します。その株式を欲しがる投資家が増えるからです。その株式に対する買い需要が増加し売り需要が減少するので、株価は売買需給が均衡する価格まで上昇します。
2:会社が業績見通しを下方修正すると株価が下落します。その株式を手放したいと思う投資家が増えるからです。その株式に対する買い需要が減少し売り需要が増加するので、株価は売買需給が均衡する価格まで下落します。このように株価は投資家の売買を通じて上下動するのです。大株主であっても一切売買しない場合は株価に全く影響を与えません。一方、2013年以降日本銀行は日経平均連動型ETF等を33兆円(2020年12月31日現在)も購入しており、株価に相当なインパクトを与えています。(興味のある方は日銀HPをご覧ください)投資家の売買行動の要因は業績見通し以外にもたくさんありますが、それはまた別の回に説明したいと思います。
さて再び「株価=予想EPS×PER」という式に戻ります。株価は世界中の投資家に等しく共通の数値です。
一方、予想EPSは未来の予想数値です。予想ですから、予想する人によってバラバラです。証券会社のアナリストは独自の予想を計算します。その予想を集計して平均値(=コンセンサスEPSと呼ばれます)を計算して発表する企業(QUICK社、IFIS社、Bloomberg社など)が複数存在します。ですから、どの予想を使うかで「割り算の答えとしてのPER」は異なります。個人投資家が現実の投資判断をする際には、「第9回:ファンダメンタルズとチャート(https://www.smtam.jp/report_column/detail/cat_11/01740/)」で書いたように、個人投資家が無料(ネット証券に口座があれば)で長期間継続して参照できるという点ではIFIS社集計のコンセンサスEPSが良いと春山は考えています。
複数の予想が存在することに加え、予想には「本年予想、翌年予想、翌々年予想」があります。そして、どの年の予想を使うのかは事前には決められていません。しかも、使われる年は徐々に変化します。理論的には、どの年のEPSを使っても間違いではありません。しかし、株式投資で儲けるという観点からは、どの年のEPSを使うのが良いかが決まっています。投資判断をする時点で最も多くの投資家が使う年の予想、それを使うのが良いことになります。それを察知するのは、実際に個別株投資を経験していく中で徐々に身について行きます。中級者レベルになれば全員が習得していると思います。とは言え、基本的なルールのようなものがありますので、そのいくつかを今後の「株価=EPS×PERシリーズ」で解説したいと思います。
さて、強気派とか弱気派とか言う言葉がありますが・・・・・
それは次回の話
次回掲載は4月21日を予定しております。
※当資料は春山昇華氏の個人の見解であり、三井住友トラスト・アセットマネジメントの見解を示すものではありません。また、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
※当資料の内容は掲載時点における市場環境やこれに関する春山昇華氏の見解や予測を示すものであり、春山昇華氏および三井住友トラスト・アセットマネジメントがその正確性、完全性を保証するものではありません。
※当資料では事例として特定の企業や銘柄に触れる場合がありますが、特定の有価証券への投資を推奨するものではなく、また当社ファンドが当該有価証券に投資することを保証するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。